研究課題/領域番号 |
21H05056
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研究種目 |
基盤研究(S)
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配分区分 | 補助金 |
審査区分 |
大区分K
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
西岡 純 北海道大学, 低温科学研究所, 教授 (90371533)
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研究分担者 |
中村 知裕 北海道大学, 低温科学研究所, 講師 (60400008)
三寺 史夫 北海道大学, 低温科学研究所, 教授 (20360943)
山下 洋平 北海道大学, 地球環境科学研究院, 准教授 (50432224)
鈴木 光次 北海道大学, 地球環境科学研究院, 教授 (40283452)
小畑 元 東京大学, 大気海洋研究所, 教授 (90334309)
近藤 能子 長崎大学, 水産・環境科学総合研究科(水産), 准教授 (40722492)
三角 和弘 一般財団法人電力中央研究所, サステナブルシステム研究本部, 上席研究員 (10462889)
安田 一郎 東京大学, 大気海洋研究所, 教授 (80270792)
南 秀樹 東海大学, 生物学部, 教授 (60254710)
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研究期間 (年度) |
2021-07-05 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
189,020千円 (直接経費: 145,400千円、間接経費: 43,620千円)
2024年度: 19,500千円 (直接経費: 15,000千円、間接経費: 4,500千円)
2023年度: 76,050千円 (直接経費: 58,500千円、間接経費: 17,550千円)
2022年度: 37,050千円 (直接経費: 28,500千円、間接経費: 8,550千円)
2021年度: 41,860千円 (直接経費: 32,200千円、間接経費: 9,660千円)
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キーワード | 鉄 / ケイ素 / 化学的プロパティ / 北太平洋 / 珪藻 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、北太平洋の「海の恵み」を生み出す珪藻の増殖する仕組みを理解するために、「なぜ北太平洋中層水はSiやFeが豊富な水塊になるのか?」の解明に挑む。どのように北太平洋中層水にSiが付加されているのか、またどのように北太平洋中層水によってFeが長距離輸送されているのか、またこれらの2つの元素がどのようにして表層に供給され、海の恵みである珪藻の増殖につながっているのかを明らかにする。本研究では大規模海洋観測、船上実験、数値モデルシミュレーションを用いて、この課題の解決を進める。また、構築した数値モデルを用いて、海氷が減少した場合の植物プランクトン群集種組成や量がどの様に変化するか予測する。
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研究実績の概要 |
本研究は、地球規模海洋コンベアベルト終焉部の北太平洋を研究対象とし、日本周辺の「海の恵み」を生み出す栄養物質の化学的プロパティを制御する仕組みの解明を目指す。2024年度までに下記の研究を進めた。 (1) オホーツク海とベーリング海の北方圏縁辺海を含む北太平洋エリアのFe、Siデータを含む栄養物質データセットを作成した。一部グローバルデータセットへの移行も進めた。(2) 堆積物コアの間隙水データの解析より、オホーツク海北西部陸棚域からNPIW上部の密度帯に当たる26.6-27.0σθ水塊に6.1×1011mol-Si/yrのSiが付加されていることが明らかになった。(3) 海洋中で不安定な溶存Feが縁辺海から長距離輸送されるためには腐植様溶存有機物のFe配位子やコロイド態としての役割が重要であることが明らかになった。(4) 植物色素データと下層から表層への栄養物質のフラックスの解析の結果より、Fe、Si を含むNPIWの栄養物質は亜寒帯ジャイア域と黒潮親潮移行域で強い乱流混合によって表層に供給され、珪藻の現存量を高めていることを定量的に示すことに成功した。(5) 東カムチャツカ海流と西部ベーリング海域の植物プランクトンの増殖は、海洋循環で供給される窒素や、河川などを通じて供給される鉄分などの栄養物質の利用可能性と、水温の影響を受ける微小動物プランクトンの捕食の有無によって決定されることを見出した。(6) 中層水に取り込まれ移送される粒子濃度や水塊の化学的プロパティの時間的変動を調べるために、南部オホーツク海クリル海盆斜面に係留系を設置した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本課題の目的は、「なぜ北太平洋はSiやFeの豊富な海になり、珪藻が優占種になるのか?」を解明し、「海洋コンベアベルト終焉部の新たな栄養物質循環像」をすることで、この海域の「海の恵み」を生み出すシステムを把握することである。また、このシステムを表現する数値モデルを開発することで将来の気候変動の影響などを抽出することにつなげる。 上記を鑑み、現時点で本研究から得られている研究成果は、下記の1)から3)の点で、北太平洋の「海の恵み」を生み出すシステムの理解に向けた知見を蓄積していると考える。 1)オホーツク海とベーリング海で実施してきた生物地球化学パラメータの観測データを、この20年間に北太平洋で実施した観測航海のデータと統合し、各測点の水柱内の塩分、水温、密度、溶存酸素、Fe、Siデータを含む栄養物質データセットを作成した。 2)NPIWによって海洋中で不安定な溶存Feがどのようにして縁辺海から長距離輸送されているのかについて、NPIWによる輸送中のFeの化学形態の変化を捉えることに成功し、溶存Feを北太平洋に広く分布させるためには腐植様溶存有機物の配位子としての役割やコロイド態Feの役割が重要であることが見えてきた。 3)SiやFeが豊富なNPIWがどのような物理プロセスを経て、どこのエリアで表層の珪藻の生産につながっているのかについても大きな研究の進展があった。
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今後の研究の推進方策 |
(1) 本研究で実施する新たな船舶観測のデータを、現時点のデータセットに取り込み拡張していく。また国際GEOTRACES計画でまとめられているグローバルデータセットへの移行を進める。 (2) 南部オホーツク海の集中的な観測を実施し、オホーツク海北部陸棚から中層水によって南部に移送されてくるSiやFeの物質移送量の季節的変動を含めた定量把握を目指す。 (3) 北太平洋スケールの海洋生態系モデル(BEC)を海洋モデル(ROMS)に組み込んだ数値モデル(BEC―ROMSモデル)を用いて、NPIW循環に対する深層水に高濃度で含まれるSiの寄与を検討する。 (4) R7年度に白鳳丸ベーリング海航海を実施し、アリューシャン海峡部やベーリング海盆斜面域などの高Siの深層水が強い乱流混合で上がってくる可能性のあるエリアの集中観測を行い、得られたデータを取り込むことで、データ解析を深化させ、数値モデルを検証する。 (5) 北太平洋や南部オホーツク海の観測を実施する航海で、生物地球化学パラメータと乱流混合過程の集中観測を実施する。特にオホーツク海クリル海盆域や、磯口ジェットと呼ばれる亜熱帯水が亜寒帯水に入り込んできているエリアで、生物地球化学パラメータと乱流混合過程の集中観測を実施する。
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評価記号 |
中間評価所見 (区分)
A: 研究領域の設定目的に照らして、期待どおりの進展が認められる
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