研究課題
特別研究員奨励費
本研究の目的は、重核の飛行時間とα/β崩壊の相関取得を行うための検出器"α/β-TOF"を開発し、多核子移行反応によって生成される中性子過剰核の質量と崩壊特性の相関測定法の開拓を行うことである。この手法の確立により、今までは測定がなされてこなかった中性子過剰超ウラン元素の質量を高確度かつ高精度に測定することができる。本研究では始めにα/β-TOFの性能評価試験を行う。その後、元素選択型質量分離器(KISS)と組み合わせた多重反射型飛行時間測定式質量分光器(MRTOF)へと搭載し、超ウラン元素の質量を高い精度と確度をもって測定し、安定の島により近い中性子過剰核の核構造の議論を行う。
多重反射型飛行時間測定式質量分光器(MRTOF)を用いた、中性子過剰超ウラン元素の精密質量測定を目指した研究開発を実施した。2枚のSi検出器からなるテレスコープをイオン検出器に組み込んだ、β-TOF検出器の開発に成功。飛行時間とβ崩壊の相関測定を実現した。理化学研究所のZeroDegree spectrometer下流に設置されたMRTOFへ導入を行い、オンラインコミッショニングを実施した。核破砕反応によって生成された中性子過剰Ga同位体である81Gaの飛行時間と、それに続いたβ崩壊の相関測定に成功。粒子の到達時刻と崩壊の起こった時刻の時間差から半減期の導出も行い、結果は文献値と誤差の範囲で一致した。当該成果は現在投稿論文としてまとめている最中であり、投稿の最終段階である。申請者は過去の研究において質量とα崩壊/核分裂の相関測定法を開拓してきたが、本開発により、β崩壊を崩壊様式として持つ核種への適用が可能となった。中性子過剰超ウラン元素の精密質量測定の端緒として、KEK元素選択型質量分離器 KISSとそれに結合させたMRTOFを用いて、238U+198Pt系の多核子移行反応によって生成される入射核様原子核の精密質量実験を実施した。MRTOFによって新同位体241Uを発見・識別し、1ppm以下の精度でその質量を直接決定した。本成果は現在解析の最終段階であり、今後投稿論文の執筆および国内外の学会において口頭発表を行う。
翌年度、交付申請を辞退するため、記入しない。
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すべて 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 2件、 招待講演 2件)
Physical Review C
巻: 104 号: 4 ページ: 044617-044617
10.1103/physrevc.104.044617