研究課題/領域番号 |
21J00671
|
研究種目 |
特別研究員奨励費
|
配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 国内 |
審査区分 |
小区分03030:アジア史およびアフリカ史関連
|
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
田中 美彩都 東京大学, 人文社会系研究科, 特別研究員(PD)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-28 – 2024-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2021年度)
|
配分額 *注記 |
4,810千円 (直接経費: 3,700千円、間接経費: 1,110千円)
2021年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
|
キーワード | 朝鮮 / 儒教 / 養子 / 植民地支配 |
研究開始時の研究の概要 |
現代韓国の家族をめぐっては、今も朝鮮時代(1392-1910)に端を発する「伝統」的な儒教的要素がその特徴として挙げられる。しかし、朝鮮時代の儒教的家族制度が近代(1894-1945)に被った変化、そしてそれが現代に及ぼした影響は注目されてこなかった。すでに申請者は儒教的観念に基づく祭祀継承のための養子を中心に近代の状況を検討し、植民地政府が儒教的養子制度を否定する法改正を実施したことで朝鮮社会がそれを「伝統」視し始めたことを指摘した。本研究課題では非儒教的慣行も含めて近代の状況を再整理し、近代朝鮮社会における家族の実像を描出することで、「伝統」の創出過程と現代への影響を具体的に明らかにする。
|
研究実績の概要 |
本研究課題の目的は、近代朝鮮の養子制度を題材として、当該社会における家族の実像と「伝統」の創出過程を具体的に描出するとともに、その「伝統」が後の韓国社会に与えた影響を明らかにすることである。分析にあたってはさしあたりその対象を、①祖先祭祀の継承のためにおこなわれる「儒教的養子制度」と、②かならずしも祖先祭祀の継承を目的としない非「儒教的養子制度」とに大別した。本年度は、①・②に関して、以下の通り研究を遂行した。 ①植民地化前後における「儒教的養子制度」の法制やその実践上の変化について、学会で報告し、その成果の一部を論文として発表した。また、家父長制の枠組みからその変化の特徴を検討し、研究報告を行った。さらに植民地政府によって導入された日本由来の氏制度・婿養子制度が、朝鮮社会の「儒教的養子制度」をめぐる価値観の形成にいかに作用したのかについても、学会で報告した。 ②植民地政府が祖先祭祀の継承権をもたないと把握した朝鮮の養子の一形態である「収養子」について、予備的考察を行った。具体的には、前近代を対象とした研究でこれまで論じられてきた「収養子」の意義の変遷を整理したうえで、植民地化の直前の時期に実施された慣習調査で把握された「収養子」の意味との異同を確認し、学会にて報告した。 上記①・②の作業を通じて、社会の儒教化が進行した前近代朝鮮(17, 18世紀)においても曖昧であった「儒教的養子制度」と非「儒教的養子制度」の境目が、近代に施行された各種の政策により徐々に明確化する過程について、見通しを得た。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初予定していた史料調査の一部はコロナウイルス感染症による渡航制限等により実施することができなかったが、可能な範囲で調査と分析を進め、一定の成果を挙げることができた。
|
今後の研究の推進方策 |
②でとりあげた「収養子」と、それ以外の特定職業集団における無血縁の養子縁組について、植民地政府が推進した政策を明らかにするとともに、それが朝鮮の養子制度とその運用にいかなる影響を与えたのかを分析することが今後の課題である。さらに①および②の成果と博士学位論文の内容を総括し、近代養子制度の動態を総合的に論じる研究書を出版したい。
|