研究課題
特別研究員奨励費
小天体探査は、惑星科学などの観点で意義深く、はやぶさ2の成功を始めとして、世界的に気運が高まっている。安全かつ高度な小天体探査を実施するには、狙った地点への高精度着陸が不可欠である。本研究では、「探査機軌道」「小天体地形」「小天体への物体衝突」の3要素の統合的な解析を行うことで、小天体への高精度着陸を汎用的な技術として確立させることを目指す。はやぶさ2で取得されたデータを解析して、実ミッションでのパフォーマンスを事後評価するとともに、将来の小天体探査を見据えた技術研究を行う。
2022年度には、小天体探査に係る以下2点の研究を行った。[小天体着陸探査のための地形解析] 小天体でサンプル採取などの着陸探査を行うためには、安全な着陸点を選定するための地形解析が不可欠である。2022年度には、はやぶさ2ミッションでのリュウグウ形状モデルを用いた表面の地形解析を体系化し、査読付き国際誌論文にて発表した。また、この成果を応用して、2025年に火星衛星フォボスを探査するMMXミッションのための地形解析を実施した。具体的には、フォボスの形状モデルを用いて、フォボスの局所的な地形に左右される日照時間および地球との可通信時間を計算した。この解析結果は、MMXにおけるフォボス到着前の着陸点事前選定に貢献した。[衝突イジェクタの軌道解析]2021年度に推定したはやぶさ2の分離カメラの位置・姿勢情報を用いて、リュウグウでの衝突実験時に放出されたイジェクタの運動解析を行った。具体的には、イジェクタ群のなす面(イジェクタカーテン)に着目し、イジェクタの放出速度や放出角度を推定した。この成果により、従来用いられてきたイジェクタスケーリング則の妥当性を示すことに成功した。また、分離カメラの画像上で独立した輝点として観測された4つの比較的大きな独立した放出ボルダーについては、画像上の輝点位置を観測量としたイタレーションを行うことで、ボルダーの軌道を数値的に復元した。これらの成果は、地上実験等で確立されてきた理論モデルを、実際の小惑星環境において初めて実証したという観点で意義が大きい。
翌年度、交付申請を辞退するため、記入しない。
すべて 2023 2022
すべて 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 1件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (6件) (うち国際学会 3件)
Hayabusa2 Asteroid Sample Return Mission
巻: 1 ページ: 189-208
10.1016/b978-0-323-99731-7.00010-6
Planetary and Space Science
巻: 219 ページ: 105519-105519
10.1016/j.pss.2022.105519