研究課題/領域番号 |
21J01321
|
研究種目 |
特別研究員奨励費
|
配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 国内 |
審査区分 |
小区分45040:生態学および環境学関連
|
研究機関 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
小口 晃平 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 生物プロセス研究部門, 特別研究員(PD)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-28 – 2024-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
|
配分額 *注記 |
4,810千円 (直接経費: 3,700千円、間接経費: 1,110千円)
2022年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2021年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
|
キーワード | シロアリ / カースト分化 / インスリン様成長因子 / インスリン受容体 |
研究開始時の研究の概要 |
繁殖と非繁殖カーストの分化を制御する仕組みは、真社会性を特徴付ける繁殖分業の根幹をなし、その仕組みの獲得は真社会性への進化における重要なイベントである。これまでに遺伝子重複は、形態進化や環境適応など進化の原動力になりうることが提唱され、社会性進化との関連も示唆されてきたがその関係性を実証した例はない。近年、シロアリにおいてインスリン関連遺伝子が重複していることが報告されている。そこで、この遺伝子重複がシロアリの真社会性進化を促したのではないかと考え、シロアリのカースト分化時におけるインスリン関連遺伝子の機能を明らかとし祖先系統と比較することで、遺伝子重複と社会性進化を関連を解明する、
|
研究実績の概要 |
本年度は、シロアリのカースト分化へのインスリン経路の関与を明らかにすることを目的に、生殖虫分化におけるインスリン様成長因子と受容体の遺伝子発現動態の解析および機能解析を行なった。材料種であるオオシロアリおよびゲノム解析等が行われている近縁種におけるインスリン関連遺伝子を解析したところ、シロアリは5つのインスリン様成長因子および、インスリン受容体が3つに重複したインスリン経路を持つことが判明した。これらについて補充生殖虫分化過程での発現解析を行なった結果、脳においてインスリン様成長因子の一つ(ilp4)が発現上昇することが判明した。またインスリン受容体の一つ(InR3)が生殖腺および外部生殖器官において発現上昇を示す傾向が得られた。さらにin situ hybridization法により、ilp4は脳間部の10対程度の細胞塊において局所的な発現が見られ、これらがインスリン分泌細胞であることが示唆された。また補充生殖虫分化を誘導した個体に対し、RNAi法による遺伝子機能阻害をおこなった結果、脱皮が遅延する他、生殖腺発達が妨げられた。よってインスリン経路の遺伝子ilp4とInR3が殖虫分化において重要な役割を果たすことが示唆された。 また、補充生殖虫以外のカースト(有翅虫、兵隊、ワーカー)への脱皮過程においても、脳を対象としたトランスクリプトーム解析やリアルタイム定量PCR法により、インスリン様成長因子を含む神経内分泌因子の発現動態を調査した。その結果、繁殖カーストである有翅虫分化時には、先の生殖虫分化過程で発現上昇を示したilp4の発現変動は見られないなど異なる挙動を示した。本結果により、インスリン経路以外の因子が有翅虫分化には寄与しており、同じ繁殖カーストでも全く異なる分子機構により分化が制御されうることが示唆された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2021年度は、予定通り、オオシロアリにおける生殖虫分化過程でのインスリン成長因子や受容体遺伝子の遺伝子発現および機能解析を行った。。リアルタイム定量PCRを精力的に行った結果、様々なカースト分化時のインスリン関連遺伝子の遺伝子発現動態が概ね明らかとなってきた。更にインスリン成長因子や受容体遺伝子が生殖虫分化において重要な役割を担うことをRNA干渉法を用いた遺伝子機能解析から明らかにした。
|
今後の研究の推進方策 |
生殖虫以外のカースト分化に関しては、更なる遺伝子発現解析と遺伝子機能解析に取り組む。また、インスリン受容体の抗体を作成し、免疫沈降法により各カースト分化が異なるインスリン経路によって制御されるか検証していく。 また、上記の知見がシロアリに普遍的な原理であるか、またその進化の様式を探るため、更に近縁種との比較なども行っていく。
|