研究課題
特別研究員奨励費
「分散知識」とは、エージェントの知識に関わる推論を扱う論理である認識論理において研究されてきた集合知的な概念である。本研究では、既存の分散知識付き認識論理に関するいくつかの問題に取り組むほか、直観主義論理や部分構造論理といった非古典論理上での分散知識を扱う体系を新たに構築し、その性質を調べる予定である。いずれにおいても、認識論理の分野では従来手薄であった、推件計算に基盤を持つ証明論の手法を用いることに特色がある。
(1)2021年度に雑誌Computacion y Sistemasに受理されていた、受入研究者の佐野勝彦氏との共著論文"Intuitionistic Epistemic Logic with Distributed Knowledge"が出版された。この論文では、古典論理ではなく直観主義論理を基盤とする分散知識論理を考案し、その完全性定理を示したほか、カット除去定理の成り立つシークエント計算を構築し、カット除去定理を利用した証明論的な手法を用いてクレイグ補間定理と決定可能性を証明した。(2)2021年度に雑誌Studia Logicaに投稿していた佐野勝彦氏との共著論文"Intuitionistic Public Announcement Logic with Distributed Knowledge"が2022年度に行った修正を経て2023年3月に受理された。この論文では、(1)の論文の論理体系を拡張して、直観主義論理を基盤とした、分散知識概念を持つ公開告知論理を考案し、その完全性定理を示している。(3)2019年度の佐野勝彦氏との研究において、古典論理上の種々の分散知識論理に対するシークエント計算が得られていた。これらの中にはカット除去定理というシークエント計算における重要な定理が成り立たないものが複数あるが、そのうちのいくつかについては部分論理式特性という良い性質が成り立つことを、従来基本的な様相論理に対して用いられていた意味論的な手法を応用して証明した。さらに、そのうち$\mathbf{S5}_D$, $\mathbf{K45}_D$, $\mathbf{KD45}_D$の三つについては証明論的な手法を用いることで部分論理式特性からクレイグ補間定理が帰結することを示した。本結果を2023年3月に第57回MLG数理論理学研究集会で発表した。
令和4年度が最終年度であるため、記入しない。
すべて 2023 2022 2021
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (1件)
Studia Logica
巻: -
Computacion y Sistemas
巻: 26(2) 号: 2 ページ: 823-834
10.13053/cys-26-2-4259
Sujata Ghosh, Thomas Icard (eds.), Logic, Rationality, and Interaction: 8th International Workshop, LORI 2021, Xi'an, China, October 16-18, 2021, Proceedings, Springer Nature, 2021
巻: - ページ: 216-231
10.1007/978-3-030-88708-7_18