研究課題
特別研究員奨励費
2億3千万年前の後期三畳紀カーニアン期において突如として気候が湿潤化し,陸域,海洋生態系に大転換が生じたことが化石記録,地層記録から指摘されている(カーニアン多雨事象).本研究は,西南日本美濃帯木曽川河床に分布するカーニアン階層状チャートを対象として,様々な地球化学的分析手法を駆使することで,陸域気候,海洋環境,火成活動の情報を同一時間軸上で復元し,これらの変動様式と前後関係を明らかにすることで「カーニアン期多雨事象では地球システムがどのように応答し,陸上/ 海洋生物の進化を促したか」という問いに迫る.
本研究では,愛知県犬山地域に露出する美濃帯層状チャートについて地球化学的手法を用いることによりカーニアン期多雨事象における全球規模での古環境変動をとらえることを目的とした.2022年度は蛍光X線分析により得られた主要元素化学組成について,組成データ解析(対数比変換)と多変量統計解析(クラスター解析,主成分分析)を適用することで,深海への風成塵供給量変動を示唆する潜在変数(PC1)を得た.PC1の層序変化は,カーニアン期多雨事象において風成塵供給量が増加したことを示し,カーニアン期多雨事象において風成塵の輸送時に大陸内部は乾燥化もしくは,風速が強化されたことが示唆された.さらに,本研究では層状チャート中の風成塵が保持するその発生源における化学風化度変動を評価するために,新たな後背地化学風化指標(RW index)を火成岩とその風化プロファイルの化学組成データセットを用いて構築した.RW indexは生物源や続成作用由来のカルシウム,リン,シリカの混入に強固な主要元素に基づく化学風化指標指標である.RW indexの層序変化は,カーニアン期多雨事象において化学風化度が促進される環境において風成塵が生成したことを示し,カーニアン期多雨事象において風成塵の生成時に大陸内部は湿潤化したことが示唆された.これらの結果をもとに,カーニアン多雨事象時の大陸内部における気候の乾湿変動の振幅とタイムスケールを議論した.これらの研究成果の一部を国際誌2本にまとめ,公表した.
令和4年度が最終年度であるため、記入しない。
すべて 2022
すべて 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 1件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (2件)
Frontiers in Earth Science
巻: 10 ページ: 63-71
10.3389/feart.2022.897396
Palaeogeography, Palaeoclimatology, Palaeoecology
巻: 608 ページ: 111288-111288
10.1016/j.palaeo.2022.111288