研究課題
特別研究員奨励費
量子計算機の誤り耐性を向上させる枠組みとして量子誤り訂正符号が提案されており,ある誤り訂正符号の復号処理は古典計算機で効率的に解けるグラフ問題に帰着できることが知られている.超伝導量子ビットを元にした量子計算機において,量子ビットは極低温環境でのみ動作するという制約を持つ.それに対して復号処理を行う古典計算機は通常は室温で動作し,それらを繋ぐ室温-極低温環境間の膨大な配線が超伝導量子計算機のスケーラビリティを制限している.本研究では極低温環境で動作する超伝導古典回路を用いて復号処理を行うことで,スケーラブルな超伝導量子計算機の構築を目指す.
本研究は超電導量子ビットを用いた誤り耐性量子計算機の実現に向け、超電導古典回路の一種であるSingle Flux Quantum (SFQ) 回路を用いて極低温環境で効率的に量子誤り訂正を行う手法の開発を目的とする。特に①SFQ回路で効率的に動作する誤り訂正アルゴリズムの開発、②そのアルゴリズムを効率的に実行するSFQ回路の作成、③量子計算機の誤り訂正性能を効率的に評価するシミュレーション環境の開発を行う。本年度は①および③についてそれぞれ進展があった。2021年度までに提案した、SFQ回路上で効率的に動作する量子誤り訂正アルゴリズムを、2値化ニューラルネットワークと組み合わせることで、従来のアルゴリズムの誤り訂正性能を強化する手法を考案した。また、2値化ニューラルネットワークを効率的に実行するSFQ回路を設計した。これにより、従来の誤り訂正回路の持つ高速・低消費電力性を維持しつつ、高い量子誤り訂正性能を持つ誤り訂正回路を提案した。この成果についての論文を論文誌に投稿し、現在査読対応中である。また、2022年5月から翌年3月まで、日本学術振興会若手研究者海外挑戦プログラムの支援のもとミュンヘン工科大学に留学し、量子計算機の誤り訂正性能を効率的に評価するシミュレーション環境の開発に取り組んだ。特に、2021年度に提案した誤り訂正アルゴリズムが対象とする格子手術と呼ばれる論理演算手法を高速にシミュレートする環境を開発した。また、現実的なエラー状況下において格子手術を用いた論理演算の実行時間を削減する手法を提案した。さらに、本研究課題におけるこれまでの成果に基づいて、2022年9月にIEEE Quantum week内のワークショップで招待講演を行った。また、同ワークショップの参加者と共同でPerspective論文を執筆し論文誌への投稿およびアメリカ物理学会での発表を行った。
令和4年度が最終年度であるため、記入しない。
すべて 2023 2022 2021 その他
すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (7件) (うち国際学会 4件) 備考 (3件)
Proceedings of the 28th Asia and South Pacific Design Automation Conference
巻: 1 ページ: 209-215
10.1145/3566097.3567933
Proceedings of 28th IEEE International Symposium on High-Performance Computer Architecture (HPCA)
巻: - ページ: 274-287
10.1109/hpca53966.2022.00028
Proceedings of 58th ACM/IEEE Design Automation Conference (DAC)
巻: - ページ: 451-456
10.1109/dac18074.2021.9586326
https://note.com/ipsj/n/n958c8664093f
https://group.ntt/jp/newsrelease/2021/11/08/211108b.html
https://www.keio.ac.jp/ja/press-releases/2022/4/1/28-122769/