研究実績の概要 |
アルミニウム合金におけるガルバニック腐食の発生を抑制するために、新規化成処理技術の開発に取り組んだ。AA5083アルミニウム合金とAISI 1045炭素鋼をポテンショスタットを介して短絡させた状態で、モリブデン酸ナトリウム水溶液中で化成処理を施した。AA5083とAISI 1045を用いたガルバニック腐食試験では、この化成処理液のpHの影響を系統的に整理した。その結果、pH 11の溶液中での化成処理によって、ガルバニック腐食に伴い発生するAA5083表面の局部腐食の数が減少することを見出した。前年度の研究から、AA5083における局部腐食の発生までの素過程として、AA5083表面のAl6(Fe, Mn)金属間化合物上での酸化還元反応と周囲のアルミニウム母相の表面酸化皮膜のアルカリ溶解が生じることが予想された。これらの化学反応に及ぼす化成処理液のpHの影響を解析した結果、化成処理液のpHがアルカリ化することによって、Al6(Fe, Mn)金属間化合物上での酸素還元反応が抑制されることが分かった。表面皮膜の分析から、Al6(Fe, Mn)表面の酸化皮膜を厚くするとともに、酸化皮膜中へのMoの濃縮と皮膜中からのFeの除去が確認された。そのため、化成処理後のAl6(Fe, Mn)の表面酸化皮膜の電気伝導性は自然酸化皮膜と比較して、低くなることが推測される。したがって、pH 11のモリブデン酸ナトリウム水溶液を用いた本化成処理はAl6(Fe, Mn)の表面皮膜を効率的に改質することで、ガルバニック腐食の発生を抑制することが見出された。
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