研究課題
特別研究員奨励費
人口の高齢化が進行する本邦は近いうちに「心不全パンデミック」状態に陥ることが危惧されている。そのため、中高齢者における実践的な心疾患予防策を構築することは急務である。近年の研究により、日常生活中の座位行動が心疾患の危険因子として特定された。しかし、日常生活中の座位行動を削減することにより、心臓の生理学的指標へ与える影響は明らかではない。そこで本研究は、中高齢者を対象に座位行動削減が心臓に与える影響を明らかにすることを目的とする。本研究の成果は、本邦における実践的な心疾患予防策の構築に貢献すると考える。
心疾患が急増する本邦において、実践的な予防介入策を確立することは喫緊の課題である。日常生活中のリスク因子として、「座位行動」が関係することが近年示されているが、座位行動を削減する介入をした際、心臓生理指標がどのように変化するかは不明である。過去の観察研究で長時間の座位行動は心臓圧受容器反射感受性の低下と関連することを発見したため、本研究は心疾患リスクの高い中高齢者を対象に、座位行動削減介入が心臓圧受容器反射感受性に及ぼす影響を明らかにすることを目的とした。2022年度は、前年度に実施した座位行動削減の介入研究データ解析、国際学術雑誌への論文投稿、これまでの研究成果を総括した博士論文執筆を行った。介入研究は中高齢者を対象に8週間実施し、1週間に1度、日常生活中の歩数と中高強度身体活動時間をフィードバックするとともに、教育支援により行動変容を促した。その結果、介入群の座位時間は約30/日程度減少したことから、介入により座位時間の削減に成功した。しかし、主要評価項目の心臓圧受容器反射感受性は、8週間の介入では有意な改善効果は確認されなかった。次に、介入期間中の座位時間の変化の個人差に注目して分析した結果、介入期間中に座位時間が増加した人は、心臓圧受容器反射感受性が低下することが確認された。したがって、日常生活中の座位時間が増加すると心臓迷走神経を介した動脈圧受容器反射の機能が低下することが示唆された。以上の結果を踏まえ、今後さらに長期間の介入研究を実施する必要があるとともに、日常生活中の座位時間の増加を抑制することが、中高齢者における心臓圧受容器反射感受性の低下を防ぐうえで重要であることが示された。
令和4年度が最終年度であるため、記入しない。
すべて 2022 2021
すべて 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 2件、 査読あり 2件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 2件)
Hypertension Research
巻: 45(7) 号: 7 ページ: 1193-1202
10.1038/s41440-022-00904-5
American Journal of Physiology-Regulatory, Integrative and Comparative Physiology
巻: 322 号: 5 ページ: R400-R410
10.1152/ajpregu.00141.2021