研究課題
特別研究員奨励費
アブシジン酸(ABA)は、植物が乾燥や塩害などの劣悪環境へ適応する際に重要な植物ホルモンである。ABAシグナルの中枢経路ではタンパク質リン酸化酵素SnRK2が活性化し、様々な基質タンパク質をリン酸化してABA応答を誘導する。しかしながら、SnRK2活性化後のシグナルの流れについては不明な点が多い。申請者はこれまでにSnRK2の新規基質タンパク質としてRaf型タンパク質リン酸化酵素Raf36を同定し、これが発芽後生長期のABA応答を抑制することを見出した。そこで本研究ではRaf36やその周辺因子の解析を進め、発芽後生長期のABAシグナル伝達におけるSnRK2-Raf36経路の役割を明らかにする。
前年度までに、①グループCに属するRaf型プロテインキナーゼのRaf36が温和環境条件下で植物の生長促進に寄与する一方でABAシグナル伝達などのストレス応答には抑制的に作用すること、②Raf36はストレス条件下において活性化したSnRK2プロテインキナーゼにリン酸化されることで分解誘導されること、を明らかにした。これらの結果から、Raf36は主に温和環境条件において標的タンパク質のリン酸化制御を行うことで植物の生長促進に寄与するモデルが想定された。したがって、本年度はRaf36の下流で制御されるリン酸化シグナル伝達経路を明らかにするために、シロイヌナズナRaf36欠損変異体(raf36-1, raf36-2)を用いた比較リン酸化プロテオーム解析を実施した。その結果、227種のリン酸化ペプチドが野生株よりもraf36変異体で有意に減少していた。また、Raf36タンパク質を免疫沈降(IP)した際の共沈産物を質量分析計(LC-MS/MS)に供試するIP-MS解析を実施することで、937個のタンパク質をRaf36の相互作用候補因子として同定した。これらの結果を組み合わせることで、17個のタンパク質をRaf36の直接的な標的基質の候補として得た。現在はそれら遺伝子欠損変異体の表現型解析を進めることで、Raf36依存的な植物生長の制御メカニズムに必要な新規シグナル伝達因子の単離を目指している。
令和4年度が最終年度であるため、記入しない。
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Proceedings of the National Academy of Sciences
巻: 118 号: 30
10.1073/pnas.2100073118
Plants
巻: 10 号: 7 ページ: 1443-1443
10.3390/plants10071443
https://www.tuat.ac.jp/outline/disclosure/pressrelease/2021/20210721_01.html