研究課題
特別研究員奨励費
宇宙マイクロ波背景放射は観測可能な最古の光であり、そのBモード偏光と呼ばれる偏光パターンの検出は、インフレーション仮説を検証する有力な手段として期待されている。この観測には、多数の検出器で広い視野を一度に観測して感度を稼ぐとともに、鏡面を冷却して熱雑音を削減することが効果的である。一方、視野を広げると視野内の偏光角が非一様になる。偏光角の不一致は疑似偏光を生じるため、本研究では、広視野冷却望遠鏡の18度×9度の視野全体における偏光角を、1分角以下の精度で決定することを目指す。
インフレーション仮説の検証に向けた宇宙マイクロ波背景放射(CMB)の偏光観測の精度向上には、望遠鏡の広視野化が不可欠である。一方で、広視野望遠鏡は焦点面の検出器位置に応じて入射光の偏光角を回転させる。2020年代後半に打ち上げが予定されるCMB偏光観測衛星LiteBIRDの低周波望遠鏡(観測帯域34-161 GHz)では、18度×9度の視野内で最大1.5度(90分角)の偏光角の回転が生じることが予想されている。偏光角の較正誤差は疑似偏光を生じることから、これを数分角の精度で較正することが要求されている。本研究では、LiteBIRD低周波望遠鏡アンテナの18度×9度の視野全体における偏光角を、ミリ波光学測定により1.9分角の精度で測定し、シミュレーションと矛盾しない結果を得た。測定は、望遠鏡の鏡面形状と観測波長を共に1/4倍することで、電磁気的に等価なアンテナ光学系を実験室に再現し、室温にて行った。測定にあたり、将来的に望遠鏡を極低温に冷却した状態で試験できるよう、観測信号を模擬する小型参照平面波源を用いた測定装置を開発し、LiteBIRD低周波望遠鏡の地上試験の実現性に対する見通しを得た。この成果は、英文査読付学術誌に掲載された。また、広視野望遠鏡や、その測定のための小型参照平面波源の開発にあたっては、設計上意図されない光路を辿る迷光の低減も重要な課題であることから、光路差の違いを利用して迷光成分を時間的に分離し、迷光を実験的に評価する測定手法も開発した。この成果は国際会議で報告した。
令和4年度が最終年度であるため、記入しない。
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Journal of Astronomical Telescopes, Instruments, and Systems
巻: 9 号: 02 ページ: 024002-024002
10.1117/1.jatis.9.2.024003
巻: 9 号: 02 ページ: 028003-028003
10.1117/1.jatis.9.2.028003