研究実績の概要 |
本研究の目的はさまざまな爆発的天体現象をフェアに考慮しながら、各天体において発生するrプロセスにおいて生成される元素の進化を解明することで、過去・現在・未来の宇宙に存在する元素の起源と歴史をあきらかにすることである。 1. rプロセス元素の銀河化学進化計算の整備: rプロセスで生成される元素について、複数のrプロセス起源天体からの寄与を考慮しながら同位体までをトレースする銀河化学進化計算の枠組みを整備をした。(Yamazaki, et al., 2022, Apj, 933(1), 112) 従来から候補天体として議論されてきた超新星爆発や、重力波の検出以降非常に注目されている連星中性子星合体に加え、コラプサーからの寄与も銀河化学進化に含めた。連星中性子星合体の発生頻度については連星系の重力波放出による軌道進化を考慮し計算した。 本研究により、rプロセスで合成される核種の同位体組成比を理論的に予言された。今後の天文観測により、銀河系の星々において同位体の分離に成功することで、各rプロセス候補天体の寄与に重要な制限をつけることが可能となった。 2. 全ての元素合成過程を考慮した化学進化モデルの精緻化と観測による評価と制限: 各元素合成過程はその過程ごとに特有な核種を生成する。rプロセスが発生するような爆発的な天体現象ではニュートリノが放出され、νpプロセスという元素合成過程も発生することが近年明らかになった。この過程は陽子過剰な核種(p核)を生成する。p核とrプロセスで生成される中性子過剰な核種(r核)を同時に計算し観測結果と比較することで、銀河化学進化モデルの精緻化を行った。(Sasaki, Yamazaki, et al., 2022, ApJ 924, 29)
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