研究課題
特別研究員奨励費
銀河系は我々の最も近くにある銀河なので、一つ一つの恒星の分光観測により銀河化学進化理論を詳細に検証できる。この特徴を活かし、先行研究では太陽から~5kpc以内の銀河系円盤に属する若い(<1Gyr)恒星は金属量勾配(銀河系中心に近いほど金属量が大きい)に従うことがよく知られている。しかし、先行研究は主に可視光高分散分光観測によるもので、星間減光の影響を強く受けていた。このため銀河系全体の若い恒星の二次元金属量分布への理解がいまだ進んでいない。そこで、申請者は銀河系円盤のより広い範囲の恒星の金属量分布を赤色超巨星の近赤外線高分散分光観測で調べ、二次元金属量分布を明らかにすることを目標とする。
本研究課題の目標は、赤色超巨星の近赤外線高分散分光観測を通じて、天の川銀河円盤の広い範囲に位置する恒星の金属量分布を調べることである。2022年度はコロナ禍の影響で延期していた観測装置の移設と観測を再開することができた。この結果、(1)観測装置で得られたデータの評価、(2)過去に観測した近赤外線スペクトルの解析、(3)本研究の基礎付けとしての赤色超巨星の大気の素性の理解、の三つの研究を主に行った。一つ目の研究では、チリ共和国のLas Campanas Observatoryに移設したWINERED分光器での試験観測に参加した。得られたエンジニアリング・サイエンス観測のデータを初期評価し、WINERED分光器が本研究課題を遂行可能な性能を発揮していることを確認することに貢献した。二つ目の研究では、赤色超巨星の化学組成を導出するためのパイプラインソフトウェアを制作し、太陽近傍と天の川銀河棒状構造終端部付近という広い範囲に位置する赤色超巨星のスペクトルを解析した。その結果、鉄元素などのいくつかの元素に対して0.05-0.20dex程度の精度で化学組成を決定できていることが確認できた。また、その成果を博士論文としてまとめあげた。三つ目の研究では、最も近くにある赤色超巨星であるベテルギウスの大気構造とその時間変化を研究した。気象衛星ひまわり8号やアマチュア天文家による観測で得られた光度曲線を解析し、主著論文と共著論文として発表した(Taniguchi et al. 2022; Ogane et al. 2022)。
令和4年度が最終年度であるため、記入しない。
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すべて 国際共同研究 (3件) 雑誌論文 (6件) (うち国際共著 1件、 査読あり 6件、 オープンアクセス 6件) 学会発表 (21件) (うち国際学会 4件) 備考 (2件)
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