研究実績の概要 |
2021年度は, 液体電極大気圧直流グロー放電の水陰極において, 水分子のイオン衝突電離によって生成された溶媒和電子(水和電子)の検出に取り組んできたが, プラズマから電子が輸送され, 液相側界面近傍層で水和するような環境にある水陽極では, シースの影響から水和電子を検出することができなかった。プラズマから輸送されてきた電子が界面近傍で溶媒和する様子を観察したいというニーズは依然としてあり, 2022年度は低ガス圧プラズマ/水ジェット装置において水和電子の検出に取り組んだ。低ガス圧プラズマ/水ジェット装置は, 水をマイクロオーダーの直径を持つ微細流として噴出させ, 下流部で凍らせてトラップすることで, 数10 mTorrオーダーの低ガス圧プラズマ中において液体の水を導入することができる装置である。水ジェットに電圧を印加することで, プラズマと水の電位差をコントロールし, 正イオン照射下および電子照射下の水表面の水和電子のキネティクスを統合的に調べることに成功した。また, 照射するNd:YAGレーザー波長を変え, レーザー誘起脱溶媒和信号の光子エネルギー依存性を調べた。モンテカルロシミュレーションから得られた(2021年度に実施)量子効率と比較すると, 驚くべきことに, 計算で得られた光電子スペクトルより低光子エネルギー側に著しく高い量子効率を示した。この成果は, プラズマと水の界面で生成された水和電子が, 通常の水和電子よりもエネルギー状態が高いことを示唆している。
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