研究課題/領域番号 |
21J12091
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研究種目 |
特別研究員奨励費
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 国内 |
審査区分 |
小区分01010:哲学および倫理学関連
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
池田 健人 大阪大学, 人間科学研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2021-04-28 – 2023-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
900千円 (直接経費: 900千円)
2022年度: 400千円 (直接経費: 400千円)
2021年度: 500千円 (直接経費: 500千円)
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キーワード | ポパー / 三世界論 / 客観的知識 / 進化論 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、20世紀の科学哲学者カール・ポパーによる三世界論を、とりわけ言語の観点から解明し、再構成するとともに、その全体を一貫した視野のもとに照らし出すことを通じて、心をめぐる現代的な議論の文脈に位置づけられるものとして提示する。また、そのような仕方で考察される心の新たな側面がもつ意義および可能性に対して、ポパーの三世界論における言語の地位を厳密に特定することと併せて批判的に検討することから、透徹した見通しを与える。
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研究実績の概要 |
ポパーによる心の説明を特徴づける独自の心身相互作用論を解明するための準備として、世界3における客観的知識の成長にかんする研究をおこなった。客観的知識とは、個体内的な情動ないし感覚の主観的知識とは異なり、批判可能な仕方で叙述言語的に定式化された知識のことである。たとえば自然科学は、その総体として代表的なもののひとつである。ポパーによれば、心は世界3との相互作用を通じてより高度な形態へと変化していく。本研究では、ポパー自身の記述を改めて慎重に精査し、検討し直すことから、ポパーの三世界論における客観的知識の成長という概念が依拠しているところの理論的基礎を明らかにすることを試みた。その結果、これまで多くの先行研究において述べられてきた主要な見解に反して、ポパーの三世界論において主張される客観的知識の成長は、認識論の領野を占める時間内的な現象であるということを突き止めた。この現象を正当に評価するためのひとつの方針は、生物学的進化論と認識論的進化論を統一的に扱う形而上学的進化論を発展させるというものである。本研究の成果は、科学基礎論学会の刊行する学術雑誌『科学基礎論研究』にて発表予定である。また、客観的知識の成長が叙述言語を介した心との時間内的な相互作用を要件とする認識論的な現象であるという結論に着目して、ポパー哲学と時間の関係についても、とりわけポパーによる時間の矢の分析を中心に、主として力学とエントロピーの観点から考察をおこなった。この成果は、2021年10月にオンラインで開催された国際ワークショップA Workshop on Contemporary Issues on Timeにて発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
客観的知識に焦点を合わせることから、ポパーの三世界論における心と言語の関係についての分析が主として世界3の水準で進み、それをもとに形而上学的進化論の重要性を示唆することもできた。当初の予定にはなかった時間論の研究にも取り組んだが、これによって計画に大幅な変更が求められることはない。
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今後の研究の推進方策 |
2021年度は、とりわけ客観的知識の成長というポパー哲学において中枢を担う概念のひとつを重点的に考察し、その現象の認識論との密接なつながりを特定することによって、物質には還元されえない客観性の領域である世界3における言語的対象と、主観性の領域である世界2における心的過程ないし状態との関係に注視することの意義を明らかにすることができた。2022年度は、ポパーの三世界論におけるこの関係、すなわち世界3と心のあいだに措定される因果的なフィードバック作用の関係にはいかなる様相が付与されているのかを、言語の観点から解明することに取り組む。
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