研究課題
特別研究員奨励費
オピオイドは神経性疼痛物質として広く認知されており、主に鎮痛作用に関する研究が中枢神経系を中心に展開されている。一方、受容体の発現と機能について神経系以外の組織に関しても報告があり、その一つに免疫系が挙げられる。先行研究ではオピオイドが免疫細胞に作用して免疫応答を調節することが示されているが、個体レベルの免疫応答に対する影響を具体的なメカニズムを伴って明らかにした研究報告は少ない。そこで本研究はオピオイドが種々のマウス疾患モデルに及ぼす影響を詳細に解析して病態変化の要因を探るとともに、in vitroの解析を用いてオピオイドが免疫応答に及ぼす影響とその機序を明らかにすることを目指す。
本研究は神経調節因子として知られるオピオイドが免疫応答に及ぼす影響を明らかにすることを目的とし、マウス疾患モデルを用いた解析を実施してきた。前年度までにOVA誘導性食物アレルギーの病態が、kappaオピオイド受容体選択的アゴニストであるNalfurafineの予防的投与により抑制されることを明らかにした。当該年度は病態抑制機序の解明を目指し、解析を行った。食物アレルギー症状はマスト細胞がIgEを介して食物抗原特異的に活性化することで惹起される。そこでマウス血中のOVA特異的IgE濃度を測定したところNalfurafine投与による変動は認められなかった。また骨髄由来培養マスト細胞を用いた解析により、Nalfurafineはマスト細胞の脱顆粒反応に直接的影響を及ぼさないことが示唆された。近年, 一部の神経伝達物質がマスト細胞活性化を誘導することが報告されている。kappaオピオイドは神経系に作用して神経細胞の活性化を抑制することから、Nalfurafineは神経伝達物質の分泌を阻害することで間接的にマスト細胞活性化を抑制することが考えられた。そこで食物アレルギー発症マウスの腸管組織における各種神経ペプチドの遺伝子発現を定量した。その結果、数種の神経ペプチドが、食物アレルギー発症に伴い有意に発現増強することが判明したことに加え、これら分子の発現がNalfurafine投与により有意に抑制された。さらに神経ペプチドが骨髄由来培養マスト細胞の脱顆粒反応を誘発することが明らかとなり、また神経ペプチド阻害剤が食物アレルギーによる体温低下の症状を緩和することが示唆された。以上の成果より、食物アレルギー病態において神経ペプチドがマスト細胞活性化に寄与することが示唆され、kappaオピオイドは神経ペプチドの発現を阻害することで病態を抑制す可能性が示された。
令和4年度が最終年度であるため、記入しない。
すべて 2023 2022 2021
すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件、 オープンアクセス 5件) 学会発表 (4件)
International Journal of Molecular Sciences
巻: 24 号: 6 ページ: 5997-5997
10.3390/ijms24065997
Frontiers in Nutrition
巻: 10 ページ: 1081263-1081263
10.3389/fnut.2023.1081263
巻: 23 号: 15 ページ: 8826-8826
10.3390/ijms23158826
Allergy
巻: 77 号: 3 ページ: 1054-1059
10.1111/all.15184
Frontiers in Immunology
巻: 12 ページ: 730706-730706
10.3389/fimmu.2021.730706