研究実績の概要 |
ロケットエンジン内部の燃焼現象を可視化する計測技術の高度化およびその燃焼現象の解明が本研究の目的である. OH-平面レーザー誘起蛍光(OH-PLIF)計測は火炎の断面を撮影する手法として利用されてきたが,ロケット燃焼特有の高圧高温・推進剤が超臨界流体となる条件への適用は困難であった.本研究は,OH(2,0)励起手法の開発に取組み,最大5.0 MPaのガス水素/ガス酸素(GH2/GO2)ロケット燃焼おいて計測のSignal-to-noise ratio (S/N)を改善し,鮮明なOH-PLIF画像の取得に成功した.取得された火炎の断面像を用いて,圧力・噴射レイノルズ数条件に対する反応帯の依存性を明らかにした.しかし,実機に近いガス水素/液体酸素(GH2/LOX)燃焼では,LOXによって入射レーザー光が散乱されるため,S/Nが著しく低下した.計測手法の高度化に取組み,GH2/LOX燃焼ではOH(2,0)励起OH(2,2)蛍光計測が適当であることを明らかにした.同手法は,強烈なノイズとして干渉するレーザーのミー散乱光(263 nm付近)や液体酸素のラマン散乱光(274 nm付近)と比べ,波長域が大きく離れたOH(2,2)バンド蛍光(320 nm)のスペクトルを撮影することが特徴である.OH(2,0)励起OH(2,2)蛍光計測手法を最大7.0 MPaのGH2/LOX燃焼に適用した結果,S/Nが良好なOH-PLIF画像の取得に成功した.申請者の知る限り,最大7.0 MPaのGH2/LOX燃焼の火炎断面を取得した前例はなく,本研究で提案した手法は燃焼現象の解明に資すると考えられる.また,高圧高温燃焼に対する定量的なLIF計測の取組みでは,最大3 MPaのGH2/GO2ロケット燃焼に対して,OH(2,0)励起双方向LIF計測を行うことでOH濃度を推定し,数値計算との比較を行った.
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