研究課題
特別研究員奨励費
この研究は、ケチュア語の方向接尾辞の働きを現地調査で得た最新のデータに基づいて記述することを目的とする。そして、ケチュア語における移動表現と状態変化表現の類似性を、類型論的観点から分析することを目指す。研究方法としては、主に実験的手法と調査票の翻訳を中心とした聞き取り調査を行う。実験的手法では、移動や状態変化を録画した動画素材や、これらの現象を表現した研究者制作の画像素材を用いる。このような手法で、1年目はケチュア語の移動表現を網羅的に記述し、移動表現において各方向接尾辞が持つ意味・機能を明らかにする。2年目は、移動表現以外における方向接尾辞の役割を、特に状態変化表現に着目して分析する。
2022年度は2021年度までに収集したデータを元に、博士論文を中心とした論文化を研究活動の中心とした。具体的には、まず国内雑誌に2報の論文を投稿し、査読の上刊行された。1報は『東京大学言語学論集』に投稿した「ケチュア語アヤクーチョ方言の言語類型論的特徴」(諸隈 2022)である。これは、本研究の研究対象であるケチュア語アヤクーチョ方言の文法を、類型論的観点を交えて総覧的に記述したものである。この論文はこの言語の文法を網羅的・包括的に記述した国内では初の論文となる。もう1報は国内では最も権威的な言語学の学術誌である『言語研究』に投稿した「ケチュア語アヤクーチョ方言の示差的目的語標示と情報構造」(諸隈 2023)である。この論文は、本研究の主要テーマである経路表示と大きく関連する、目的語標示のバリエーションを情報構造の観点から分析、議論したものである。次に、本研究と同じ枠組みの調査を行った研究者との共同研究の成果を、国際学会Neglected Aspects of Motion-Event Description(NAMED)2022にて発表した(Nagaya et al. 2022)。これは、移動表現における経路表示のパターンを、表示手段と表示回数に着目し、通言語的な類型性を分析したものである。最後に、これらの研究成果やフィードバックを踏まえて博士論文を執筆し、2023年1月に提出、同年3月に博士の学位を認定された。この間2月には博士論文の修正のためにペルーでの研究交流と資料の収集を行った。
令和4年度が最終年度であるため、記入しない。
すべて 2023 2022 2021
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 2件)
言語研究
巻: 163 号: 0 ページ: 111-138
10.11435/gengo.163.0_111
東京大学言語学論集 = Tokyo University linguistic papers (TULIP)
巻: 44 号: TULIP ページ: 235-278
10.15083/0002005833
https://repository.dl.itc.u-tokyo.ac.jp/records/2005833
アジア・アフリカの言語と言語学
巻: 16 ページ: 241-260
10.15026/117164
https://tufs.repo.nii.ac.jp/records/1606