研究課題
特別研究員奨励費
小胞体ストレス応答は、IRE1といったセンサー分子を介して小胞体の恒常性を維持する機構であり、小胞体内腔の異常タンパク質の蓄積や飽和脂肪酸負荷によるリン脂質の飽和化によって引き起こされる。飽和脂肪酸によるIRE1の活性化機構は、異常タンパク質によるものと質的に異なることが示唆されているが、その詳細なメカニズムは未だ不明である。 本研究は、飽和脂肪酸刺激により産生される膜環境、並びに、スクリーニングで同定されたオートファジー関連遺伝子を中心に解析を行い、飽和脂肪酸負荷によるIRE1活性化機構の解明を目指す。
小胞体ストレス応答(UPR : Unfolded Protein Response)は、小胞体内腔側の異常タンパク質の蓄積により誘導され、タンパク質恒常性を維持する重要な細胞応答である。UPRは飽和脂肪酸の負荷によっても活性化されることが明らかとなっており、飽和脂肪酸誘導性のUPRは、代謝性疾患との関連が示唆されている。しかしながら、異常タンパク質によるUPRは、小胞体センサータンパク質の内腔ドメインを介した分子機構の理解が進んでいるのに対し、飽和脂肪酸誘導性のUPR活性化機構はほとんど明らかとなっていない。これまでの解析から、飽和脂肪酸誘導性のIRE1の活性化にはオートファジー関連遺伝子(ATG: Autophagy related genes)が関与していることが示唆されている。本研究では、飽和脂肪酸負荷によりATG分子がIRE1を活性化する分子メカニズムの解明に関して、以下のような研究成果を得た。1.飽和脂肪酸負荷によるIRE1の活性化には、特定のATG分子が必要である。2.ATG分子は飽和脂肪酸誘導性のLPA (Lysophosphatidic acid)、PA (Phosphatidic acid)、CDP-DAG (CDP-diacylglycerol)合成を促進する。3.ATG分子は飽和脂肪酸負荷時のGPAT(Glycerol-3-phosphate acyltransferase)活性を促進する。4.飽和脂肪酸誘導性のリン脂質はIRE1の活性化に関わる。以上のように、本研究では、飽和脂肪酸負荷時に特定のATG分子がリン脂質新規合成経路を活性化し、飽和型リン脂質の蓄積を引き起こすことで、IRE1を活性化している可能性を見出した。
令和4年度が最終年度であるため、記入しない。
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すべて 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 1件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (4件)
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