研究課題
特別研究員奨励費
世界で最初に400種のジペプチドから発見した、新規CHOL代謝改善ペプチドFP(フェニルアラニン-プロリン)は、腸ペプチド輸送担体(PepT1)を必須とする新規腸コレステロール吸収調節系が存在することを示唆している。FPに関する知見は、全て世界初の成果であり、本発見は、従来単なるペプチドの輸送担体であると考えられてきたPepT1が生活習慣病に関連するコレステロール代謝と深く関連する予想外の画期的発見であり、生活習慣病予防改善のための新規標的分子である。腸ペプチド輸送担体が関与する新規CHOL吸収調節系の全貌解明および、ペプチドによる生活習慣病の予防改善のための革新的探索評価技術を創成する。
これまで、Phe-Pro (FP) はコレステロール (CHOL) 代謝を改善する作用を有することを、PepT1欠損マウスへの経口投与試験 (600 mg/kg/day) で明らかにしてきた。他方、摂取後のFPの生体内での作用機序については不明のままであった。昨年度は、Wistar系雄ラット (11週齢) にFPを単回経口投与 (600 mg/kg) し、門脈採血をおこなった。その後、AccQ Tagアミン誘導体化LC-TOF/MS法 (内標準:[13C9,15N1] FP) により血中濃度を測定し、FPが0.485 nmol/mL-plasma存在することを判明し体内吸収性を証明した。そこで、今年度はこれらの濃度をベースに、HepG2細胞でCHOL代謝改善作用の影響を評価した。1.生理的血中濃度FPはCHOL蓄積を抑制する血中濃度レベルでHepG2細胞に対するFP添加の影響を検討したところ、0.485 nmol/mL濃度のFP添加によって細胞内CHOL濃度は有意に低下し、CHOL分解系律速酵素であるCYP7A1やPPARα mRNAレベルは有意に増加した。FPの構成アミノ酸混合物(F + P)では低下作用は認められなかった。また、PPARαアンタゴニスト存在下でFPの作用が消失したことから、FPはPPARα刺激を介して作用発現していると推察された。2.FPはPPARαの新規リガンドであるAlphaFold2を用いたin silico解析によって、FPを含む132種類のジペプチドにPPARαとの相互作用が認められ、PPARαのリガンド候補となりうることが示された。以上より、FPはPPARαのリガンドとして作用し、肝臓においてCHOL代謝を改善する作用を有するペプチド体であることが示された。
令和4年度が最終年度であるため、記入しない。
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