研究課題
特別研究員奨励費
被子植物では受精後に形成される組織(胚乳)で,片親由来の対立遺伝子の発現が選択的に抑制されるゲノムインプリンティング(genomic imprinting)という現象が存在することが知られている.しかし,植物においてゲノムインプリンティングは被子植物のみで確認されており進化的起源に関しては不明な点が多い.本研究では,タイ類のモデル植物であるゼニゴケを用いて,胞子体で片親性発現を示す遺伝子の網羅的同定と機能解析,これらの遺伝子発現を制御する分子基盤の解析により,ゼニゴケの胞子体にゲノムインプリンティングが存在するかどうかを明らかにすることを目指す.
陸上植物の気孔は,subfamily Iaに属するbHLH型転写因子(Ia bHLH)とsubfamily IIIbに属するbHLH型転写因子(IIIb bHLH)のヘテロ二量体による発現制御によって形成される.気孔をもたないゼニゴケにおいてIa bHLHであるMpSETAが,subfamily IIIbに属するbHLH型転写因子MpICE2と協調的に働くことで,コケ植物のみがもつ組織である蒴柄(さくへい)の形成を制御することを明らかにした(Moriya et al., Nat Plants, 2023).RNA-seqにより,MpSETAおよびMpICE2が発現を制御する下流遺伝子の候補の探索を行い,いくつかの興味深い下流遺伝子候補が得られた.この中には,シロイヌナズナにおけるオルソログが気孔形成に関与することが報告されている遺伝子も含まれていた.さらにMpICE2と相互作用するタンパク質を複数種類,酵母ツーハイブリッド法により同定し,BiFC法やco-IP法などを用いてタンパク質間相互作用の多角的な検証を実施した.また,当該タンパク質をコードする遺伝子の機能解析のために,Multiplex CRISPR系(polycistronic tRNA-gRNA system)の導入による効率的な変異体作出,レポーター遺伝子を使った発現組織の同定等を行った.また,胞子体において片親性発現が起こる遺伝子の網羅的同定のため,同一胞子嚢由来のアクセッションを用いて擬似的なレシプロカルクロスを行い,RNA-seqを行うためのサンプリングを実施した.
令和4年度が最終年度であるため、記入しない。
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Nature Plants
巻: 9 号: 2 ページ: 302-314
10.1038/s41477-022-01325-5
https://www.kyoto-u.ac.jp/ja/research-news/2023-01-20-5