研究課題
特別研究員奨励費
ヒトの細胞では莫大な数のゲノム変異が存在し、それに伴うアミノ酸置換や挿入などの変異がタンパク質レベルでも起こっている。それら変異はキナーゼの基質の周辺にも起こる。キナーゼは基質中の特徴的な配列を認識してリン酸化を行うため、基質周辺における変異はキナーゼによるリン酸化反応に影響を与える。しかし、それら変異がキナーゼによるリン酸化反応に与える影響の網羅的解析は進んでいない。本研究では新規キナーゼ基質網羅的同定法を軸として、がんにおけるゲノム変異依存的なリン酸化シグナルの網羅的解析を行い、がんにおける薬剤耐性メカニズムの解明を目的とする。
今年度は、新規キナーゼ基質網羅的同定法およびチロシンホスファターゼの包括的活性測定法の確立を目指した。新規キナーゼ基質網羅的同定法に関しては、近接依存性ビオチン標識、キナーゼ摂動リン酸化プロテオミクス、リン酸化モチーフ解析の3つのアプローチにより、CK2およびPKAの基質同定に成功した。また、同定された基質周辺でのがんに関連するアミノ酸変異の影響を評価し、発がん性変異がリン酸化シグナルに影響を与えうることを示した。チロシンホスファターゼの包括的活性測定法に関しては、チロシンホスファターゼ(PTP)と強く結合する非加水分解性のリン酸化チロシン模倣体(F2Pmp)を組み込んだペプチド型プローブに着目した。本研究では、配列を系統的にデザインした17種のF2Pmpペプチドプローブを合成した。これらプローブを用いることで、プローブ配列依存的にPTPと結合することを示したと共に、classical PTPの包括的濃縮を達成した。また、F2PmpプローブによるPTP濃縮の大規模情報を取得することにより、これまでは行えなかったPTPのpY基質指向性情報とF2PmpプローブによるPTP濃縮の相関の詳細な解析を可能とし、その相関を明らかにした。本研究により、F2Pmpプローブ配列の効率的な設計が可能になったと考えられる。さらに、本研究ではF2PmpプローブがPTP活性依存的にPTPと結合することを示し、本プローブを用いることにより、EGF刺激において、複数のPTPの活性が経時的に変動することを示した。これらの手法はリン酸化ネットワーク全体の理解に資する重要な基盤となると考えられる。
翌年度、交付申請を辞退するため、記入しない。
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すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 2件)
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