研究課題
特別研究員奨励費
本研究では、予後不良な卵巣癌において、B7H3分子が免疫抑制、浸潤能といった腫瘍の悪性形質を複合的に増強している可能性に着目し、腫瘍微小環境におけるB7H3の、特にマクロファージを介した腫瘍進展への寄与の詳細を究明する。そして、すでに卵巣癌治療において実用化されている薬剤との組み合わせにより、B7H3の抑制を基軸とした、卵巣癌の腫瘍微小環境を複合的に阻害する治療法を開発する。
我々は、卵巣癌細胞におけるB7-H3の、M2マクロファージを介した抗腫瘍免疫抑制作用を明らかにした。さらに、B7-H3の阻害がM2マクロファージによる抗腫瘍免疫抑制の解除と卵巣癌進展の抑制につながると考え、抗B7-H3抗体による治療実験を行った。腫瘍発育(腹水貯留)の指標であるマウスの体重推移について、抗B7-H3抗体治療群において、コントロール群に比べ体重増加が遅延する傾向を認めた(p=0.14)。また、大網腫瘍内に浸潤する免疫細胞において、CD8T細胞数は不変である一方で、M2マクロファージの数が抗B7-H3抗体治療群で低下する傾向を認めた(p=0.06)。使用した抗B7-H3抗体のクローンは、他癌腫のマウスモデルで著明な腫瘍発育抑制効果を示したものであるが、本研究においては期待するほどの抗腫瘍効果が得られず、その理由として、癌腫および腫瘍微小環境の違い等が考えられる。さらに、現在までB7-H3の結合相手(リガンドないし受容体)が同定されていないため、既存の抗B7-H3抗体が、B7-H3とその結合相手との相互作用をどのように阻害するのかが不明である点は、B7-H3を標的とした治療がさらなる発展を遂げるための課題である。より効果的にB7-H3-結合相手間の作用を阻害するためには、その結合相手の同定が必要不可欠であることから、膜タンパクライブラリと質量分析を用いたB7-H3の結合相手の解明への取り組みを開始している。
令和4年度が最終年度であるため、記入しない。
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