研究課題
特別研究員奨励費
中部アフリカに位置するカメルーン共和国南東部において、人間―獲物動物―食肉目という三者関係をモデルとして設定し、地域住民と食肉目を対象とした研究を行う。参与観察と聞き取りによって人間活動による自然界への影響を考察するとともに、カメラトラップを用いて食肉目の個体数やその行動特性を調査する。そして、民族生態学的手法と自然生態学的手法を統合することで、観測の困難な食肉目の生態と地域住民の生活の関係を明らかにする。
本研究の目的は、カメルーン共和国南東部の熱帯雨林地域において、自然生態学的手法と民族生態学的手法を用いた調査を行うことで、観測の困難な食肉類の生態と地域住民の生活との関係をより詳細に理解することである。本目的達成に向け、今年度は以下のことに取り組んだ。1.小型食肉類(サーバルジェネット、アフリカンパームシベット、クロアシマングース、ハナナガマングース)の個体数密度を推定し、各共変量との関係について考察を行った。その結果、最も個体数密度の高い種はハナナガマングース(0.74/km2)であり、サーバルジェネット、クロアシマングースはほぼ同等(0.39/km2、0.38/km2)、アフリカンパームシベットは最も個体数密度が低くなった(0.29/km2)。また、ハナナガマングースとクロアシマングースにおいて、人間活動による負の影響を受けていることが示唆された。頂点捕食者であるヒョウとその次の地位にいるアフリカンゴールデンキャットは、撮影頻度が低く推定を行うことができなかった。これら二種の撮影頻度は他国における調査結果よりも低い値を示しており、本調査地では比較的低密度で分布している可能性が示唆された。これらの結果を投稿論文とするため準備を進めた。2.10月から1月にかけて、民族生態学的調査のためカメルーンへ渡航した。計83人の地域住民に半構造化インタビューを行い、カメラトラップでは調査が困難であったヒョウに関する情報を収集した。多くの人物が森林内でヒョウを目撃した経験を持ち、当時の情景を鮮明に記憶していた。目撃場所、季節、時間帯、同行者といった情報だけでなく、ヒョウがどのような行動をしていたのかについても詳細な語りが得られた。これにより、住民への聞き取り結果を分析することで、カメラだけでは調査が困難である森林ヒョウの分布や行動などに関する新たな知見が得られる可能性が示唆された。
令和4年度が最終年度であるため、記入しない。
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すべて 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (1件)
Journal of Applied Ecology
巻: 59 号: 10 ページ: 2567-2580
10.1111/1365-2664.14257