研究課題
特別研究員奨励費
休眠は、生存に不利な環境下でエネルギー消費を減らすため、発生や生殖を一定期間抑制する生存戦略である。休眠を行う昆虫は、短日条件などの休眠刺激を内分泌器官に伝え、ホルモンの動態を制御することで休眠を開始する。申請者はこれまでに、キイロショウジョウバエにおいて休眠条件下でホルモン生合成を調節する内分泌器官直接投射神経を発見した。また申請者は、この神経が概日リズムを感知する時計神経に制御されることを示唆する結果を得ている。そこで本研究では、「時計神経による休眠刺激の受容-内分泌器官への神経情報伝達-内分泌器官内部でのホルモン生合成制御」という一連の経路の解明を目指す。
休眠は、生存に不利な環境下でエネルギー消費を減らすため、発生や生殖を抑制する生存戦略である。休眠は多くの動物で知られており、一部の昆虫では卵巣などの生殖器官を著しく縮退させる生殖休眠が見られる。生殖休眠の制御に重要な因子が、アラタ体という内分泌器官で産生されるホルモンである。生殖休眠を行う昆虫では、短日条件や低温などの休眠刺激をアラタ体に伝え、ホルモンの動態を制御することで休眠を開始することが知られている。申請者はこれまでに、キイロショウジョウバエにおいて休眠条件下でホルモン生合成を調節するアラタ体直接投射神経を発見した。また申請者は、この神経が概日リズムを感知する時計神経に制御されることを示唆する結果を得ていた。そこで本研究では、「時計神経による休眠刺激の受容-アラタ体への神経情報伝達-アラタ体内部でのホルモン生合成制御」という一連の経路の解明を目指した。ショウジョウバエの脳内の時計神経は約150個の細胞により構成されており、脳側方に位置する4グループと脳背方に位置する3グループに分けられる。これらの時計神経がアラタ体直接投射神経を制御しうるのか確認するために、ショウジョウバエ成虫脳のコネクトームデータベースを使用した。このデータは、電子顕微鏡写真から得られた神経連絡の情報がまとめられており、任意の神経に投射する神経を検索可能である。この結果、既知の時計神経がアラタ体直接投射神経と神経連絡を持つことが示された。さらに、トランスジェニック系統を用いた実験により、アラタ体直接投射神経において時計神経から分泌される神経分泌因子の受容体が発現していることが示唆された。また、申請者はアラタ体のex vivoイメージング系の確立を行い、cAMPレベルの変化を捉えることに成功した。この系を用いることで、アラタ体直接投射神経から分泌される神経分泌因子がアラタ体で受け取られることを示した。
令和3年度が最終年度であるため、記入しない。
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Frontiers in Ecology and Evolution
巻: 9
10.3389/fevo.2021.715029