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アミロイドベータをモデルとした神経変性疾患ペプチドへの非平衡流動効果の解明

研究課題

研究課題/領域番号 21J21839
研究種目

特別研究員奨励費

配分区分補助金
応募区分国内
審査区分 小区分32010:基礎物理化学関連
研究機関山形大学
特別研究員 飯田 茜  山形大学, 大学院理工学研究科, 特別研究員(DC1)
研究期間 (年度) 2021-04-28 – 2024-03-31
研究課題ステータス 交付 (2022年度)
配分額 *注記
2,200千円 (直接経費: 2,200千円)
2022年度: 700千円 (直接経費: 700千円)
2021年度: 800千円 (直接経費: 800千円)
キーワードアミロイドβ / 脂質二重膜 / 開放系 / アルツハイマー病 / タンパク質 / 単分子観察 / 脂質膜 / 非平衡 / 拡散係数
研究開始時の研究の概要

認知症の一種であるアルツハイマー病は、アミロイドβ(Aβ)蛋白質が脳細胞表面に凝集・蓄積する特徴を有するが、その機構は未解明な部分が多い。機構解明を困難にする理由の1つに、脳の神経細胞間を流動する間質液の効果がある。間質液流動はAβを脳外へ排斥し凝集を抑制する効果を有する一方で、その流動が凝集を促進する効果も有しており、常にAβが供給・排斥される非平衡開放系と呼ばれる環境が生じる。本研究では脳内を模倣した実験系を構築し、脳細胞表面にAβが凝集・吸着する過程を分子レベルで観察することで、非平衡開放系がAβ凝集・吸着に与える分子科学的寄与とアルツハイマー病の発症機構解明を目指す。

研究実績の概要

アルツハイマー病(AD)は、アミロイドβ(Aβ)タンパク質が脳細胞表面に凝集・蓄積する特徴を有する完治が困難な疾患である。その機構は未解明領域が多々あり、中でも凝集初期過程にあたるモノマーからオリゴマー形成までの挙動および細胞毒性の解明は、ADの解明および創薬にとって必要不可欠とされている。Aβが凝集・蓄積する脳内では間質液が常に流動しており、この流動がAβを含む老廃物を脳外へ排斥する一方、流動がAβの分子構造を変化させ、凝集を促進することも報告されている。本研究では、Aβの供給と排斥を伴う開放系に着目し、開放系における脂質膜上のAβの初期凝集挙動の解明を目指した。
脳細胞を模倣した脂質膜を製膜し、生理学的低濃度のAβを添加した後、新たなAβの添加を行わない閉鎖系と、連続的にAβを供給・排斥する開放系において、全反射照明蛍光顕微鏡を用いて脂質膜上のAβの吸着・凝集挙動を観察した。その結果、閉鎖系と比較して開放系は吸着量が1.5倍程度多く、モノマーからダイマーへの会合速度が速いことが明らかとなった。また、脂質膜上のAβの拡散速度を追跡したところ、モノマーからペンタマーにおいて、閉鎖系では会合数の増加に伴って拡散速度の最大値が小さくなった一方、開放系では会合数によらず閉鎖系よりも10倍以上速い拡散性を有する会合体が存在することが明らかとなった。この差異は、Aβの構造変化もしくは脂質膜とAβの相互作用に開放系が作用している可能性を示唆する。
従って、閉鎖系と比較して開放系は、脂質膜へのAβの吸着量を増加させるとともに、脂質膜上のAβの拡散性の増加に伴い会合化を促進することが示唆された。以上より、脂質膜上のAβの吸着・凝集挙動の促進に開放系が関与する結果を見出したため、開放系を考慮してADの機構解明を行う重要性を提唱する。

現在までの達成度
現在までの達成度

3: やや遅れている

理由

本研究課題は当初の計画よりは少し遅れているものの、おおむね順調に進んでいる。当初の計画では、1年目にアルツハイマー病(AD)の初期の発症機構を解明するべく、脳内を模倣した分子レベルの実験系を構築し、生体環境に欠かせないアミロイドβ(Aβ)の供給・排斥を伴う開放系がAβの凝集ならびにAβと脂質膜間の相互作用に与える効果を検証する予定としていた。2年目では脂質の組成や開放系の流速変調によるAβ凝集挙動の検証を予定していた。1年目の計画は実施が完了し、2年目に予定していた内容はまだ完了していない。その理由としては、1年目に実施した実験結果を詳細分析した結果、ADの発症機構の解明には脂質膜上のAβの拡散性が重要である可能性が浮上し、拡散性の解析に着手したことが挙げられる。閉鎖系と開放系では、Aβの供給・排斥の有無により系内に存在するAβの物質量が異なる。この差異がAβの吸着や凝集速度の差異に関連していると考えていたが、それぞれの系におけるAβの会合数ごとの脂質膜上の拡散速度を定量化したところ、閉鎖系では従来の方程式にて理論的に議論できる会合数の増加に伴う拡散性の低下が確認できたが、開放系では会合数の増加によらず、閉鎖系の10倍以上の速度の拡散性を有するAβが存在することが明らかとなった。この結果は、単に物質量の差異がAβの吸着・凝集に寄与しているのではなく、Aβの構造もしくはAβと脂質膜間の相互作用機序の変化により、吸着・凝集速度に変化が生じた可能性を示唆する。以上の研究進捗より、当初の計画よりはやや遅れているが、閉鎖系と開放系における初期のAβ吸着・凝集機構の解明が進んでいる。

今後の研究の推進方策

2022年度までの研究にて、アルツハイマー病(AD)の初期の発症機構を解明するべく単分子レベルの観察が可能な実験系を構築し、脂質膜上のアミロイドβ(Aβ)の吸着・凝集挙動ならびに拡散性の定量化に成功した。今後の方針として、2年間で築いた実験・解析手法を基軸としながら、神経変性疾患に共通する規則性の解明の研究を進める。当初の計画通り、ADやパーキンソン病等の神経変性疾患に寄与するタンパク質に着目し、開放系における吸着・凝集・拡散挙動の差異からその規則性を導くことで、神経変性疾患全般に共通する発症機構の解明を目指す。また、ここまでの研究活動の中で、人工甘味料がADやガンの発症・進行を促進する因子になっている可能性が示唆されている。そこで、アスパルテームやアセスルファムK等の人工甘味料にも着目し、神経変性疾患タンパク質との共生存下において、その凝集挙動や細胞膜破壊に与える影響の定量化を目指す。実験手法としては、脳細胞膜を模倣した脂質二重膜を使用し、タンパク質や人工甘味料を添加後、巨視的観察には蛍光顕微鏡、微視的観察には全反射照明蛍光顕微鏡を使用し、脂質膜表面における吸着・凝集挙動を定量化する。比較方法としては、凝集体の形成個数・サイズ・形状、脂質膜破壊の形状および破壊率の解析を行うとともに、蛍光分光計による結果と比較することで、AD発症に重要となるAβの吸着・凝集・膜破壊挙動を誘起する因子の同定を行う。

報告書

(2件)
  • 2022 実績報告書
  • 2021 実績報告書
  • 研究成果

    (13件)

すべて 2023 2022 2021

すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (10件) (うち国際学会 1件、 招待講演 1件)

  • [雑誌論文] Adsorption, Aggregation, and Diffusion Behavior of Amyloid β on the Lipid Membrane2023

    • 著者名/発表者名
      Akane Iida-Adachi, Hideki Nabika
    • 雑誌名

      e-Journal of Surface Science and Nanotechnology

      巻: 21 号: 3 ページ: 169-173

    • DOI

      10.1380/ejssnt.2023-019

    • ISSN
      1348-0391
    • 年月日
      2023-01-19
    • 関連する報告書
      2022 実績報告書
    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] 閉鎖系・開放系における脂質膜とタンパク質との相互作用2022

    • 著者名/発表者名
      飯田 茜, 安部 光洋, 並河 英紀
    • 雑誌名

      膜

      巻: 47 号: 1 ページ: 15-20

    • DOI

      10.5360/membrane.47.15

    • NAID

      130008159626

    • ISSN
      0385-1036, 1884-6440
    • 関連する報告書
      2021 実績報告書
    • 査読あり
  • [雑誌論文] Promoted Aggregation of Aβ on Lipid Bilayers in an Open Flowing System2021

    • 著者名/発表者名
      Iida Akane、Abe Mitsuhiro、Nochi Miona、Soga Chiaki、Unoura Kei、Nabika Hideki
    • 雑誌名

      The Journal of Physical Chemistry Letters

      巻: 12 号: 18 ページ: 4453-4460

    • DOI

      10.1021/acs.jpclett.1c00524

    • 関連する報告書
      2021 実績報告書
    • 査読あり
  • [学会発表] 単分子観察による開放系における脂質膜上のアミロイドβ吸着および凝集挙動の解明2022

    • 著者名/発表者名
      飯田茜, 並河英紀
    • 学会等名
      第12回CSJ化学フェスタ
    • 関連する報告書
      2022 実績報告書
  • [学会発表] 拡散追跡による脂質膜上の初期のAβ凝集過程に対する開放系の効果2022

    • 著者名/発表者名
      飯田茜, 並河英紀
    • 学会等名
      第60回日本生物物理学会年会
    • 関連する報告書
      2022 実績報告書
  • [学会発表] 開放系における脂質膜界面でのアミロイドβ拡散の単分子追跡2022

    • 著者名/発表者名
      飯田茜, 並河英紀
    • 学会等名
      第73回コロイドおよび界面化学討論会
    • 関連する報告書
      2022 実績報告書
  • [学会発表] 脂質二重膜上のアミロイドβオリゴマー凝集に対する開放系空間の効果2022

    • 著者名/発表者名
      飯田茜, 並河英紀
    • 学会等名
      日本膜学会第44回年会
    • 関連する報告書
      2022 実績報告書
  • [学会発表] 脳脊髄液流動を想定した開放系空間における脂質膜上のアミロイドβ凝集の単分子観察2022

    • 著者名/発表者名
      飯田茜, 並河英紀
    • 学会等名
      第45回日本バイオレオロジー学会年会
    • 関連する報告書
      2022 実績報告書
  • [学会発表] 非平衡開放系における脂質膜上のAβ吸着挙動の単分子観察2021

    • 著者名/発表者名
      飯田茜
    • 学会等名
      第72回コロイドおよび界面化学討論会
    • 関連する報告書
      2021 実績報告書
  • [学会発表] 非平衡開放系における脂質膜界面でのアミロイドβ凝集の分子機構解明2021

    • 著者名/発表者名
      飯田茜
    • 学会等名
      2021年日本表面真空学会学術講演会
    • 関連する報告書
      2021 実績報告書
    • 招待講演
  • [学会発表] 脂質膜界面でのアミロイドβの初期凝集に対する非平衡空間の効果2021

    • 著者名/発表者名
      飯田茜
    • 学会等名
      2021年日本表面真空学会学術講演会
    • 関連する報告書
      2021 実績報告書
  • [学会発表] 開放系空間における脂質膜上のアミロイドβ凝集挙動の単分子観察2021

    • 著者名/発表者名
      飯田茜
    • 学会等名
      第59回日本生物物理学会
    • 関連する報告書
      2021 実績報告書
  • [学会発表] Single Molecule Observation of Amyloid β Aggregation on Lipid Membrane under Non-equilibrium Opened Space2021

    • 著者名/発表者名
      Akane Iida
    • 学会等名
      The 9th International Symposium on Surface Science
    • 関連する報告書
      2021 実績報告書
    • 国際学会

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公開日: 2021-05-27   更新日: 2025-12-26  

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