研究課題/領域番号 |
21J22531
|
研究種目 |
特別研究員奨励費
|
配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 国内 |
審査区分 |
小区分57020:病態系口腔科学関連
|
研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
上野 智也 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(歯学系), 助教
|
研究期間 (年度) |
2021-04-28 – 2024-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
|
配分額 *注記 |
2,200千円 (直接経費: 2,200千円)
2022年度: 700千円 (直接経費: 700千円)
2021年度: 800千円 (直接経費: 800千円)
|
キーワード | 骨肉腫 / Runx3 / Myc / スーパーエンハンサー |
研究開始時の研究の概要 |
骨肉腫は骨関連間葉系細胞由来の悪性腫瘍で、代表的なヒト希少である。75%の骨肉腫患者が未成年で、四肢の切除手術などで若くして失うものの影響は大きい。しかし、「希少がん」ゆえに、骨肉腫の研究者人口は少なく、その発症機序の解析が遅れている。骨関連間葉系細胞の腫瘍化機構の解明は、歯科学の分野においても重要な課題である。 先行研究により、骨肉腫発症機序の根幹は、p53不活性化下での転写因子Runx3によるMycの過剰発現であることが判明した。さらに、腫瘍微小環境で放出されるサイトカインTGFβが、p53不活性化後に腫瘍化の起点を担う重要な因子であることも見出した。本研究では、その分子機序の解明を目指す。
|
研究実績の概要 |
骨肉腫発症のモデルマウスとして、骨芽細胞特異的p53KOマウス(OSマウス)が広く使用されており、本研究もこのマウスを用いて解析している。OSマウス由来の骨肉腫細胞(OS細胞)を腫瘍微小環境因子TGFβで刺激すると、Runx3を介したMycの過剰発現が誘導される。そこで、このMyc過剰発現に関わるゲノム上の重要な領域を探索する目的で、ATAC-SeqやH3K27ac-ChIP-Seq(クロマチン活性を検出)及びRunx3-ChIP-Seqを行ったところ、Myc遺伝子下流に存在する活性化領域(Mycスーパーエンハンサー; MycSE)を同定した。さらにモチーフ解析により、このMycSEにはRunxをはじめとした様々ながん関連転写因子が集積していることが示唆された。実際に、CRISPR/Cas9を用いたゲノム編集によってMycSEを欠失させたOS細胞では、TGFβ誘導性のMyc発現が抑制される。また、OS細胞を用いたChIP及びCoIPにより、MycSE上に、TGFβ誘導性に転写因子群が複合体を形成することも確認できた。以上のことから、MycSEはTGFβ誘導性に活性化し、転写装置の土台として機能すると考えられる。 前述のMycSEが、OSマウスの骨肉腫発症・進展に与える影響を検証するために、CRISPR/Cas9を用いたゲノム編集により、MycSE欠損させたOSマウス(OS; MycSEΔ)を作製した。また、同様の目的でTgfbr2欠損OSマウス(OS; Tgfbr2fl/fl及びfl/+)を作製した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
p53非存在下の腫瘍微小環境におけるTGFβの役割を正確に評価するための実験系を確立することができた。すなわち、これまでに使用してきたp53欠損OS細胞の他に、p53欠損マウス骨髄由来間葉系幹細胞株 (ST2p53Δ細胞)においても、同様にTGFβ誘導性MycSE/Runx3依存的Myc過剰発現がみられた。さらに解析に必須な一連の遺伝子改変マウスも、計画通りに作出することができた。
|
今後の研究の推進方策 |
今後は、p53欠損OS細胞に加え、ST2p53Δ細胞、さらに作出した一連の遺伝子改変マウスを解析に用いることによって、より詳細な骨肉腫発症・進展の分子機序の解明をめざす。
|