研究課題/領域番号 |
21K00004
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分01010:哲学および倫理学関連
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研究機関 | 東京都立大学 |
研究代表者 |
金澤 修 東京都立大学, 人文科学研究科, 客員研究員 (60524296)
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研究分担者 |
小島 和男 学習院大学, 文学部, 教授 (80383545)
宮崎 文典 埼玉大学, 教育学部, 准教授 (50506144)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
完了 (2023年度)
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配分額 *注記 |
3,900千円 (直接経費: 3,000千円、間接経費: 900千円)
2023年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2022年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2021年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | アショーカ王碑文 / バクトリア / ガンダーラ / アラム語 / アイ・ハヌム / アクラシア / クレアルコス / アリストテレス / ギリシア倫理思想 / ヘレニズム |
研究開始時の研究の概要 |
これまで当該地域について行われてきた研究を批判的に再検討し、方法論的欠落点を洗い出し、当該地域の実態の統合的復元に適した研究方法を提案する。その上で個々の事例についてギリシア語、パーリ語、アラム語、ペルシア語等の原典資料の直接的な読解を行う。具体的には、ギリシア思想の東漸の事例として、ギリシア人植民都市アイ・ハヌム遺跡出土パピルス断片、同遺跡出土デルフォイ箴言碑文の倫理学的な意味付け、さらにギリシア語・アラム語訳アショーカ王碑文の哲学史的な価値の再検討である。これらの研究を通して、俯瞰的な観点が欠落していたバクトリア周辺での文化・思想的な実態を統合的な見地から復元する。
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研究実績の概要 |
本研究の成果は以下の通りである。 (1) ヘレニズム時代のギリシア哲学は、アレクサンドロスの東征以降、東方へと伝播したというのみならず、さらにギリシア文化にとって異文化であるインド思想の把握、あるいは仏教思想の伝達に一定の役割を果たしていた。このことを「アショーカ王碑文・ギリシア語・アラム語バイリンガル碑文」、および「アショーカ王碑文・カンダハル出土ギリシア語碑文」の読解によって提示した。さらに「バイリンガル碑文」に見られるアショーカ王のエピテットの音写の違いに着目し、アラム語はそれが建立された現地の音韻を反映しているのに対し、ギリシア語は東北インドの音韻を反映していることを指摘した。 (2) 上述の「バイリンガル碑文」において、アリストテレス『ニコマコス倫理学』第7巻での主要なテーマである「アクラシア」なる術語と、ピュタゴラス派において生類の食用禁忌を意味する術語が使用されていることを指摘した。前者は中期インドアーリヤ語で刻まれた「アショーカ王碑文」にはない表現である。これはギリシア語翻訳者(たち)が自らのギリシア哲学の知見をもとに独自の翻訳を行ったことを示している。それに対し「カンダハル出土ギリシア語碑文」では原典となった法勅を直訳している。この指摘によって、翻訳態度を違える二つのギリシア語翻訳の伝統が、バクトリア・ガンダーラ地方に存在したことを明らかにした。 (3)上記の研究を補強する目的で、当該地域へのギリシア哲学・倫理学の流入経路が検討された。その証拠の一つは、近隣の「アイ・ハヌム遺跡」に残された「クレアルコス」なる人物に求められる。この人物は、東方への知見を示す著作断片を残したアリストテレスの弟子であることが示された。その結果、彼をはじめとしたペリパトス派がギリシア倫理思想の当該地域への流入経路である可能性を示すことができた。
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