研究課題/領域番号 |
21K00010
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分01010:哲学および倫理学関連
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研究機関 | 三重大学 |
研究代表者 |
遠山 敦 三重大学, 人文学部, 教授 (70212066)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
完了 (2023年度)
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配分額 *注記 |
390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
2023年度: 130千円 (直接経費: 100千円、間接経費: 30千円)
2022年度: 130千円 (直接経費: 100千円、間接経費: 30千円)
2021年度: 130千円 (直接経費: 100千円、間接経費: 30千円)
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キーワード | 伊藤仁斎 / 大学 / 易 / 大学定本 / 易経古義 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、日本近世の儒者伊藤仁斎の倫理思想の特質を、その『大学』注釈である『大学定本』、及び周易注釈である『易経古義』の諸稿本の分析から明らかにしようとするものである。仁斎の倫理思想は、主として『集注』に代表される朱熹の経典解釈に対する批判的検証に基づいた仁斎自身の経書注釈によって形成されていくが、本研究ではそうした経書注釈のうち、とりわけ仁斎がその経書性を否定した『大学』、及びその一部のみを選択的に評価し、注釈を行った『易』に焦点をあて、仁斎の手になる『大学定本』『易経古義』諸稿本の成立過程を辿りながら、仁斎倫理思想が、朱子学をどのような観点から批判し形作られて行ったかを明らかにする。
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研究成果の概要 |
従来の伊藤仁斎研究においては、仁斎の『大学』に対する否定的評価のみが論じられてきたが、本研究ではそうした傾向に対して、仁斎が『大学』の「至善」を「仁敬孝慈信」という日常的徳目を意味するものと捉える独自の理解に基づき、肯定的にも理解していた点を明らかにすることができた。 一方、仁斎の『易』理解については、彖・象二伝に対する積極的な評価と、繋辞伝に対する否定的な評価が、あくまでも『易』を日常生活の次元で理解しようとする仁斎の基本的姿勢に基づくものであることを確認することができた。
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研究成果の学術的意義や社会的意義 |
日本近世の支配的思潮は儒教、とりわけ朱子学であったといえる。これに対し伊藤仁斎は朱子学に対抗し独自の儒教理解を示したが、その特徴の一端を彼の『大学』及び『周易』理解に見いだすことができる。朱熹の理的世界観やその学の形而上学的性格に対して、仁斎が示した儒教をあくまでも人倫日用の道と捉える理解は、八条目を否定し「至善」を「仁敬孝慈信」といった日常的徳目と捉える『大学』理解や、『易』において繋辞伝・説卦伝を否定的に捉え、彖伝・象伝を「陰陽消長の理」を明らかにすることを通じて日用人倫の動態理解に資するものとしたことに示されている。これらの内に日本の伝統的倫理観の一つの特徴を窺うことができる。
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