研究課題/領域番号 |
21K00013
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分01010:哲学および倫理学関連
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研究機関 | 横浜市立大学 |
研究代表者 |
有馬 斉 横浜市立大学, 国際教養学部(教養学系), 教授 (50516888)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2025年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2024年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2023年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2022年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2021年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
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キーワード | 終末期医療 / 鎮静 / 安楽死 / 意図 / 二重結果原則 / 倫理学 |
研究開始時の研究の概要 |
緩和ケアの一部である持続的で深い鎮静(CDS)は、終末期の病気に伴う耐え難い苦痛から患者を解放するために、患者を無意識にし、その状態を死亡するまで維持する処置である。CDSには、用法によって、患者の生命を短縮する効果がある。また、患者の視点からは、完全な無意識の状態は死んでいる状態と主観的に区別できない。このため、CDSについては、積極的安楽死(致死薬を投与して患者を殺す処置。国内では認められていない)と道徳的に同等であるとする批判的な見解が存在する。本研究ではこの見解の妥当性の検討を通して、CDSの実施が倫理的に適切といえるための条件に関するディスカッションに貢献することを目指す。
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研究実績の概要 |
前年度までの文献レビューの結果、鎮静の倫理に関する議論の中に、意識低下作用のある薬は、症状そのものを抑える作用も備えている場合、たとえそれを投与することで患者の意識が実際に低下するとしても、投与している医師は意識を低下させることを意図していないとする意見が最近になって出てきていることを確認した。また、そのために、たとえ意識低下が望ましくないことだとしても、二重効果原則で正当化できるとする議論があることを確認した。 2022年度には、①このような新しい見解を踏まえて、鎮静の分類と倫理的論点の整理を行い、国内の雑誌(『北海道生命倫理研究』)に論文を投稿し、査読を経て採択された。また、②この新しい見解が間違っていることを示す論文を英語で執筆し、国際誌に投稿した(under review)。 また、③生命維持に必要な人工呼吸器の取り外し(いわゆる尊厳死)について、これを実施する医師の意図は、あくまでつらい治療を避けることであって、患者を死なせることではないから正当化できるとする意見について、文献レビューを実施し、検討を加え、国内の学会(日本臨床死生学会)で報告した。また、現在、④生命倫理の教科書のために二重効果鎮静の応用に関する章を執筆中である。 また、この他、日本医学哲学・倫理学会の『医学哲学・医学倫理』にAID(精子提供による人工授精)の倫理に関する文章(共著)を、同学会の国際誌『Journal of Philosophy and Ethics in Health Care and Medicine』にEditorialを、筑摩書房の書評誌に書評を執筆するなどした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
上記の研究実績の概要に記した通り、多数の論文をいずれも単著で執筆できた。
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今後の研究の推進方策 |
鎮静の是非、安楽死・尊厳死の倫理に関する研究を継続する。2020-22年度には鎮静の是非に関する論文を集中的に発表してきた(論文6本、いずれも単著)。これらの成果をすべて含めて、単著の形にまとめる計画である。鎮静を倫理的な観点から分類し、鎮静の倫理的論点を整理し、いくつかのタイプの鎮静については安楽死との間に道徳的に重要な違いがないと考えらること、二重効果鎮静の原則に訴えて正当化できるとする意見が間違っていることを指摘し、許容できる範囲を具体的にあきらかにする内容を研究書として出版できるように準備する。 また、人工呼吸器の中止を二重効果鎮静によって正当化できるとする主張を批判的に検討し、英文の論文をまとめ、国際誌に投稿したい。
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