研究課題/領域番号 |
21K00027
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分01010:哲学および倫理学関連
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
頼住 光子 東京大学, 大学院人文社会系研究科(文学部), 教授 (90212315)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,600千円 (直接経費: 2,000千円、間接経費: 600千円)
2024年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2023年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2022年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2021年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
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キーワード | 道元 / 正法眼蔵 / 選択本願念仏集 / 天台本覚論 / 法然 / 親鸞 / 『正法眼蔵』 / 存在論 / 比較思想 / 大乗仏教の存在論 / 比較思想的探究 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、(1) 道元の思想構造を、『正法眼蔵』等の主要著作に対する厳密なテクスト・クリティークに基づき、その独自の世界把握に着目してテクスト内在的に解明する。(2)(1)を基盤として存在論、とりわけ大乗仏教の存在論という視座から道元の思想を比較思想的視点も含め多角的に検討する。以上の2点を通じて道元思想の独自性と大乗仏教としての意義を解明し、成果を国内外に発信することを目指す。
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研究実績の概要 |
本申請研究の目的は、(1)道元の思想構造を、その独自の世界把握を軸に『正法眼蔵』等テクスト内在的に解明する。(2)(1)を基盤とし大乗仏教の「存在論」という観点から道元の思想的意義を比較思想の手法も含め多角的に検討解明する、という2点である。 (1)については『正法眼蔵』の本文校訂、諸異本の校合、道元が典拠にしたと推定される典拠の調査、道元の文体研究に基づき、テクスト内在的に、とりわけ「縁起―無自性―空」に焦点を当てて、存在論の観点から研究を遂行した。研究成果の一部について、論文発表、国内外の口頭発表を行った。また本年度刊行した単著『原典で読む日本の思想』の一章として研究成果の一部を発表した。さらに今回の科研の研究成果を総括すべく『正法眼蔵』の精密な註解に基づく研究書刊行について現在執筆中である。 (2)については、大乗仏教の「存在論」としては道元と対照的な親鸞のそれに着目した。また、親鸞思想の淵源をなす法然思想に関しても検討を行った。その上で、これまで申請者が蓄積してきた道元思想の研究に基づき「存在論」に関する議論を総括し、法然・親鸞のそれと比較検討し、それぞれの特徴を浮かび上がらせると同時に、大乗仏教思想としての共通性についても解明した。そして、その成果の一部を論文発表、口頭発表のかたちで公表した。特に本年度刊行した単著『原典で読む日本の思想』では、この三者の思想を存在論のみならず、関連して世界観や行為論、時間論の観点からも概観できるように試みた。また、道元、親鸞、法然の思想の共通性を、非-天台本覚思想と捉えた上で、この点をさらに検討すべく、平安末期から鎌倉時代にかけての日本天台宗の思想状況に関する最新の研究動向の調査を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本申請研究の一つ目の目的である、「(1)道元の思想構造を、その独自の世界把握を軸に『正法眼蔵』等テクスト内在的に解明する」に関しては、存在論の観点から重要な意味を持つ諸巻を取り上げて、その本文の、校訂、諸異本の校合、書写本等の調査を行い、さらに、道元が『正法眼蔵』執筆の際に参照したと推定される中国禅の典籍の調査収集を行った。これらの文献的研究を踏まえた上で、上記諸巻の全文注釈を行った。その際、従来十分に解釈されていたとは言い難い難解な箇所については、『正法眼蔵』全巻の用例を参照したり、その特異な文体を類型化したりしつつ読解の精度を高めた。これらの成果の一部については、研究発表を行った。以上から、(1)に関して、研究は、当初の予定どおり順調に進んでいるといえる。 また、本申請研究の二つ目の目的である、「(2)(1)を基盤とし大乗仏教の存在論という観点から道元の思想的意義を比較思想の手法も含め多角的に検討解明する」に関しては、本年度は、親鸞からさらに法然に遡って検討した。とりわけ、法然の主著である『選択本願念仏集』を中心として他の諸著作、書簡、関連する語録を中心に、法然と道元の存在論との比較を行った。両者は、世界観としては、浄土と穢土の二元論、浄土否定の現世一元論などとされ、相容れないと考えられる。しかし「空―縁起」の存在論の視座から見れば通底するということを解明した。これらの研究成果の一部については、研究会等で成果を発表した。以上から、(2)に関しても、研究は、当初の予定どおり順調に進んでいるといえる。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の推進方策としては、まず、これまで扱っていない『正法眼蔵』諸巻のうち、存在論という観点から重要な意味を持つ巻をさらに選んで、本文の、校訂、諸異本の校合、諸書写本の調査を行い、道元が『正法眼蔵』執筆の際に参照したと推定される中国禅の典籍の調査収集を行う。以上を踏まえ、上記の『正法眼蔵』の当該巻について (1)従来解しがたいとされ、十分に解釈されていない難読箇所については、『正法眼蔵』全巻の用例を参照して解釈を行う。また、特異な文体については類型化し解釈を検討することで読解の精度を高める。 (2)上述の校訂、註釈、解釈作業に基づき、存在論を中心とした道元の思想的構造を解明する。その際に自然観についても充分に注意を払い研究を推進する。 (3)大乗仏教の存在論としての道元思想の解明のための基礎作業を続行する。具体的には『選択本願念仏集』『教行信証』等、法然、親鸞の著作や主要大乗仏典に関する文献の調査収集である。 (4)以上の成果について学会で口頭発表、論文発表、研究報告等を行なう。特に、海外発信について留意する。
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