研究課題/領域番号 |
21K00034
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分01010:哲学および倫理学関連
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
大西 克智 九州大学, 人文科学研究院, 教授 (60733996)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
3,380千円 (直接経費: 2,600千円、間接経費: 780千円)
2025年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
2024年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2023年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2022年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2021年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
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キーワード | モンテーニュ / ソクラテス / 良心 / 意識 / 経験 / デカルト / 精神史 / アイデンティティ / 自己意識 / 自己 |
研究開始時の研究の概要 |
哲学における重要なトピックの一つである「意識」は,17世紀,R. デカルトによって哲学史に初めて明確な概念として導入された。しかし,導入の経緯に関しても,導入以前と以降の連続性と変化に関しても,不明な点が多数残されている。これを受けて,本研究では,「意識」を「良心」と不可分なものと捉えてきた古代末期以来の思想の系譜を辿り,その先に,近代的な「意識」概念及び「意識」に伴う「自己」の概念が形成される過程を明らかにすることを目指す。
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研究実績の概要 |
2022年度は、本研究の出発点となる自著『『エセー』読解入門ーモンテーニュと西洋の精神史』(講談社学術文庫、2022年6月9日刊)の内容をさらに展開してゆくための最初の契機として、「「経験」と「概念」のはざまで」と題する提題を行ない(東京大学哲学会大会ワークショップ「自由と主体の系譜学ー古代哲学と近世哲学の間で」、2022年10月29日)、共同提題者ならびにフロアとのやりとりを通して、多くの示唆を得た。その中でも、本研究の遂行にあたって特に重要なのが以下の三点である。 第一に、中世哲学および近世哲学における「良心」と「意識」の関係を探るに際しても、当時まだ明示的に概念化されてはいなかった経験的自我と超越論的自我の関係が問題となること。この点は、本研究を近代からさらに現代哲学へと接続するさいのいわば橋頭堡となるだろう。 第二に、モンテーニュの思索を「反ー哲学」と位置付けた上記提題が、哲学という営みの本質と限界そのものに再考を促しうるものであったこと。言い換えれば、「哲学者とは誰なのか」という根本的な問いに改めて取り組むことの正当性を認識できたこと。 第三に、これら二点と連動して、「経験」という概念を、いわゆる(「合理論」と対をなす)「経験論」の枠組みから解放して考え直す必要性を確認できたこと。 現時点では、以上の三点に関わる論文等を具体的に執筆し、公表する段階にまでは至っていないが、三点とも、本研究をより拡大深化させながら進めてゆくうえで支えとなる認識であり、そのような認識を得たということが2022年度の大きな成果であった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
「研究実績の概要」欄に記した通り、2022年度は、現時点での研究内容を論文等のかたちに纏めて公表するには至らなかったが、提題発表を通じて、来たる三年間の研究をいっそう稔り豊かなものとするために不可欠な認識を得ることができた。その意味で、研究は「おおむね順調に進展している」と考える。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度は、第一に(実績の概要第一に対応)、計画当初の予定通り、D. O. Lottinの古典的な大著 "PSYCHOLOGIE ET MORALE AUX XIIe ET XIIIe SIECLE" を分析しつつ、中世哲学における「意識」と「良心」および「良知」の錯綜した関係を解きほぐす作業を行う。あわせて、J. Stelzenberger による重要な研究書 "SYNEIDESIS, CONSCIENTIA, GEWISSEN" の検討にも着手する。 第二に(実績の概要第二に対応)、 今秋開催される九州大学哲学会大会シンポジウムで行う提題の準備もかねつつ、ソクラテスとモンテーニュに通有する「哲学者とは誰のことか」という問いを、しかるべきかたちで提示する作業を行う。 第三に(実績の概要第三に対応)、黒田亘がつとに『経験と言語』(1975年)で追究した「経験」と「経験論」の関係を、同書の議論を手がかりにしつつ改めて考える作業を行う。 上記第二および第三の成果は論文のかたちに纏めて公表する予定である。
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