研究課題/領域番号 |
21K00037
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分01010:哲学および倫理学関連
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研究機関 | 埼玉県立大学 |
研究代表者 |
高村 夏輝 埼玉県立大学, 保健医療福祉学部, 准教授 (60759801)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
3,120千円 (直接経費: 2,400千円、間接経費: 720千円)
2025年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2024年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2023年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2022年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2021年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
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キーワード | ラッセル的一元論 / 汎心論 / 人生の意味 / ネーゲル / 現象的意識 / 結合問題 / 素朴実在論 / 論理的必然性 / 規則のパラドクス / 汎質論 |
研究開始時の研究の概要 |
現象的意識の物理主義的説明が可能かについて論争が繰り広げられている。その中で、ラッセル的一元論は、物理主義と同様に一元論を取ることで心身二元論の問題を回避しつつ、現象的意識の実在性に関する経験的な直観を守る立場として注目されている。 一方で、ラッセル的一元論には「結合問題」という深刻な問題が指摘されている。 本研究では、ラッセル的一元論の諸立場が共有している、現象的意識は脳を構成する物質の内在的性質によって構成されるという前提を改めることによって結合問題を解決し、現象的意識の解明としてラッセル的一元論が有望であることを示そうとするものである。
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研究実績の概要 |
2022年度には、ラッセル的一元論の一種である汎心論の立場が道徳的問題に対してどのような意義をもちうるかを検討した。また、汎心論の代表者であるフィリップ・ゴフの文献を読み解き、今後の議論の方向性を検討する作業を行った。
道徳的問題として取り上げたのは、人間が生きていることに何の意味があるのかという問題である。もし物理的実在の基底レベルに心が位置づけられるなら、死の必然性は生の無意味さを意味しないかもしれない。たとえばゴフは、『ガリレオの誤り』このように直接的には生の意味の問題と汎心論とを結びつけないものの、汎心論的世界観によれば死によって東洋の宗教における「悟り」と同様の状態が実現する可能性を示唆している。
2022年度に発表した論文では、「人生の意味」の問題についての古典的論文であるネーゲルの「人生の無意味さ」の論文を手掛かりに、その問題の論理構造を明らかにし、それに対してどのように応答する可能性があるかを検討した。その中で、パトリック・シュペートの論文「汎心論、ビッグ‐バン論証、そして生の尊厳」に言及しつつ、汎心論的世界観を生が意味をもつ根拠として提示しても、人生の意味の問いに肯定的に答えることは失敗すると否定的に論じた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
ラッセル的一元論は、ラッセル的物理主義、汎心論、汎質論と様々な具体化を許す広い立場である。その内のどの立場を支持すべきかについて決定しなければ、なかなか個別の論点に踏む混んでいくことができない(話題が広くなりすぎるため)。しかし、どの立場を支持するべきかを決定するには、ラッセル的一元論が措定するミクロ物理的存在の内在的性質を、物理的性質とすべきか、心的性質とすべきか、それとも物理的ではないが心的でもない質とするかという問題、そしてそれらの立場が「結合問題」という難問に答える能力があるかどうかという問題に決着をつけなければならない。 この問題の解決の鍵となるのは、現象的質を捉える概念として「現象的概念」を認めるかどうかの問題である。再認概念の一種である現象概念によって捉えられるのだとすれば、思考可能性論証や知識論証は成立し、物理主義の批判が可能になるが、同時に結合問題が生じるからである。 この問題に対して、当初はウィトゲンシュタインの私的言語論批判との関連で現象的概念を批判的に検討し、結合問題の根を立ちつつ、ミクロな現象的質とマクロな現象的質との関係を経験的に探究する可能性を開けるのではないかと考えていた。しかしこの問題は意識のハードプロブレムとも関わるものであり、多数の文献があり、調査が追い付かない面があった。一方で、現在の意識に関する議論とウィトゲンシュタイン哲学との関連についての文献は必ずしも多くないため、なかなか結論が出せず、どの立場を支持すべきかを決定できなかった。
しかし2022年度は、この点に関しては可能性を開いたままでも可能な、応用的分野である、ラッセル的一元論・汎心論の道徳的意義の検討につながる作業を進めることができた。研究計画の主要部分である、どの立場を選ぶかが決定された後に、接合できると思われるので、幾分遅れを挽回できたと言える。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度は、ラッセル的一元論にとって難問とされる「結合問題」について、一応の解答となる論文を作成する予定である。この課題についての現時点での見通しは以下の通りである。 ラッセル的一元論は、心の哲学における物理主義と二元論の間を行く立場として提起され、その魅力が語られることが多い。したがって、その立場を支持する議論には、物理主義の批判が含まれる。しかし物理主義を批判するための代表的議論である、思考可能性論証や知識論証を利用すると、それと同型の議論によって、ラッセル的一元論・汎心論に対して結合問題が指摘されることになる。したがって、ラッセル的一元論・汎心論が結合問題を解決するには、思考可能性論証や知識論証を利用せずに自説を支持する議論を展開しなければならない。これは物理科学についての構造主義という主張を利用することによって可能である。その上で、結合問題そのものについては、経験的探究によって解決する可能性が開かれると主張すればよい。 この議論がうまくいくならば、ラッセル的一元論として妥当な世界観は、汎心論か汎質論のどちらかになる。そしてこの両者のうちのどちらを支持するべきかは、質ではなく接近意識を関係・傾向性などの物理科学的概念で説明できるかどうかにかかってくる。 このような見通しを具体化するべく、文献調査と論文執筆をしていく予定である。
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