研究課題/領域番号 |
21K00040
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分01010:哲学および倫理学関連
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研究機関 | 帝京大学 |
研究代表者 |
金成 祐人 帝京大学, 理工学部, 講師 (80880707)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,860千円 (直接経費: 2,200千円、間接経費: 660千円)
2024年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
2023年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2022年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2021年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
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キーワード | 現象学 / フッサール / ハイデガー / 自然 / メタ存在論 / ピュシス / デリダ / メルロ=ポンティ / 大地 / 世界 / 実在 / 観念 / 身体 / 技術 |
研究開始時の研究の概要 |
現象学は、「自然」を人間の経験の地盤として明らかにしたが、未だ各現象学者の「自然」概念にどのような共通点と差異があるのかが未解明であり、現象学的自然概念の射程は明らかになっていない。本研究は、ハイデガーの自然概念を、フッサールの「自然」および「大地」の概念と結びつけ、さらにメルロ=ポンティの「自然」および「肉」の存在論へと接合し、言語的理解に先立つ身体性を含めた現象学的自然概念の画定を目指す。さらにこのことを通じて、人間と自然の関わりについての新しい展望を開き、ハイデガーにおける技術論の理論的背景を明らかにする。
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研究実績の概要 |
現象学における自然概念を分析することを通して、人間と自然の同質性と差異性を明らかにするという本研究の目的のために、本年度は以下の次の四つの側面から研究を進めた。 ①ハイデガーとフッサールの比較研究:「フッサールとハイデガーの自然概念の分析を通じた現象学的自然概念の解明」として公表した。フッサール『イデーンⅡ』における精神の「自然の側面」と、ハイデガーの形而上学期における「全体における存在者」としての自然概念に着目し、理性的沈殿物の堆積以前(フッサール)、意味的世界の形成以前の被投性の次元(ハイデガー)に、両者に共通する経験の地盤としての自然があることを論じた。 ②ハイデガーのメタ存在論・全体における存在者の研究:本研究に関わりの深い最新の研究書について合評会を企画し、オーガナイザー兼提題者を務めた。また、この内容を「ハイデガーにおけるメタ存在論の由来・内実・射程──丸山説の検討──」として公表した。同書を批判的に検討することを通じて、メタ存在論の由来・内実・射程を論じた。 ③デリダを参照軸としたハイデガーのピュシス論の研究:ハイデガーの諸テクストとデリダ『獣と主権者Ⅱ』の読解を並行して進めるなかで、デリダのWaltenに関する解釈の射程や問題点が明らかになってきている。 ④メルロ=ポンティの自然概念:メルロ=ポンティの講義ノート『自然』の読解を進め、自然と身体について研究を進めている。①ではメルロ=ポンティの読解を援用しながらフッサールとハイデガーの自然概念の架橋を試み、哲学史・自然科学を経由したメルロ=ポンティの自然概念について文献研究を継続している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究の中心となるハイデガーの自然概念について順調に進んでいる。ハイデガーとフッサールの自然概念の比較研究に関する成果を公表した。また、最新の関連文献に関する合評会を企画し、研究者間での議論の機会を創出した。さらに、その成果をハイデガー研究会編『Zuspiel』第7号で公表した。他方、デリダのWalten解釈とメルロ=ポンティの自然概念については、文献研究は進んでいるものの成果の公表には至っていない。次年度の目標としたい。
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今後の研究の推進方策 |
研究成果の公表が遅れているデリダを参考軸としたハイデガーのピュシス論の研究、メルロ=ポンティ研究を継続する。また、それと並行してハイデガーの技術論に着手する。これまでの自然に関する研究成果を踏まえ、あらゆるものを物資として駆り立てる「総かり立て体制(Gestell)」を特徴とする現代技術と区別された、テクネーによる自然との関わりについて、ハイデガー技術論の読み直しを試みる。自然を人間が自由に使い回すことのできる素材として捉えるのではなく、人間身体が否応なく投げ込まれている経験基盤として捉え、自然自体がもっている力を実現する「こちらへと-前へと-もたらすこと(Her-vor-bringen)」としての技術(テクネー)によって自然と関わるあり方を解明する。
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