研究課題/領域番号 |
21K00043
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分01010:哲学および倫理学関連
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研究機関 | 同志社大学 |
研究代表者 |
森田 團 同志社大学, 文学部, 教授 (40554449)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
3,770千円 (直接経費: 2,900千円、間接経費: 870千円)
2024年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2023年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2022年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2021年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
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キーワード | ミメーシス / メタファー / 批評 / ハインツ・ヴェルナー / 反省概念 / ベンヤミン / 歴史哲学 / 美学 / 言語哲学 / 悲劇 / ロマン派 |
研究開始時の研究の概要 |
ヴァルター・ベンヤミン(1892‐1940)の芸術をめぐる考察が、いかに最終的に歴史哲学的な思考へと結実していくのかを、カント以来のドイツ美学、ならびに20世紀初頭のドイツ哲学を考慮に入れながら、三つの対象、すなわち(1)ロマン派の芸術論、(2)17世紀悲劇、(3)資本主義文化それぞれのベンヤミンによる解釈を検討することを通じて、またそれらの歴史哲学との関連が、言語ならびに記号への独特の洞察を通して成立することを明示することを通じて、明らかにすることが、本研究の概要である。
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研究実績の概要 |
令和4年度は、ベンヤミンの芸術論ならびに言語論を中心に研究を行った。 言語論に関しては、2022年12月、鹿児島大学にて開催された西日本哲学会の第73回大会でのシンポジウム「メタファーをめぐる思考:生・言語・超越」にて、「ミメーシスによる身体表現とメタファー:ヴァルター・ベンヤミン「ミメーシスの能力について」の一解釈」と題した発表を行った。 この発表では、「ミメーシスの能力について」(1933)を、根源的メタファー、すなわち世界を世界として開示する働きとの関連で読解することを試みた。その際、ベンヤミンが評価していた心理学分野での言語解釈の成果であるハインツ・ヴェルナー『言語観相学の根本問題』(1932)を参照し、言語の表現性というものが身体と深く関連しているというヴェルナーの洞察を、ベンヤミンのミメーシス解釈、つまりミメーシスの能力が言語能力に変転するという解釈に関連づけ、身体による模倣に基づいた表現行為が、この変転に深くかかわる可能性を発表では追求した。 ヴェルナーの『隠喩の起源』(1919)もまた、ベンヤミンによって直接言及されてはいないものの、当時のメタファーをめぐる思考にとって重要な著作であり、ヴェルナーのこの二つの著作を踏まえてベンヤミンの言語論を考察することができたのは、そのすべてが発表ないし公表予定の論文に反映はできなかったとはいえ、大きな成果であった。 また当該年度は、前年度の研究主題でもあった『ドイツ・ロマン主義における芸術批評の概念』(1919)に、大学院講義を利用しながら引き続き取り組み、フィヒテの反省概念を基盤にしたロマン派の芸術理論を、ベンヤミンがどのように解釈したのかという問いに解答を与えることを試み、ベンヤミンによる反省概念の解釈が自らの言語論に基づいて行われていることについて一定の洞察を得ることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和3年度に取り組んだ悲劇論に加えて、令和4年度は、ベンヤミンの言語論、ならびにロマン派論を中心に芸術論を扱ったが、このことによってより包括的なベンヤミンの言語論と芸術論の、そして両者の連関の理解を得ることができた。 ロマン派論を扱った大学院講義においては、ベンヤミンの前期言語論「言語一般および人間の言語について」(1916)ならびに「翻訳者の課題」(1921)も扱ったが、さらに後期言語論である「ミメーシスの能力について」もシンポジウム発表の準備を通して読解することことによって、ベンヤミンの言語論を総体的にあらためて俯瞰することができた。このことは、ベンヤミンの芸術論の基盤に自身の言語への認識があることを、より明確な理解へともたらす大きな起因となった。 言語論と芸術論は、来年度の課題となるベンヤミンの歴史哲学の前提となる認識を包含している。なぜなら、ベンヤミンの歴史認識の単位は「イメージ」であり、この歴史のイメージが孕む言語的な構造を展開することが、そのまま歴史認識となると考えられるからである。したがって、令和3年度と令和4年度の研究成果は、来年度の課題のための確固とした土台となる。 このように令和3年度から令和4年度にかけての研究は、有機的に関連づけられるように、つまり互いが互いの洞察を促進するように進められることとなった。 以上の理由により、研究課題がおおむね順調に進展していると評価した。
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今後の研究の推進方策 |
令和5年度は、ベンヤミンの歴史哲学に重点を置き研究を遂行する。その際、令和3年度、令和4年度の研究成果、ならびに研究を通じて明らかになった課題を踏まえて、本年度の研究にいかしたい。具体的には、まず令和5年度に発行される『西日本哲学年報』に公表するために、ミメーシスとメタファーについての論文を準備する。 また学部において、「ベンヤミンと批評」と題した講義を年度後半に行うが、この講義準備を利用しながら、本年度の研究をさらに進める予定である。 その際、全体の研究計画を理論的に緊密に連関させることを意識して、講義を弾力的に利用しながら研究計画を遂行し、研究課題を有機的に展開させることを試みる。とりわけ令和4年度の課題であった17世紀のドイツ悲劇の読解は、充分に進捗したとは言えず、次年度の研究主題に一部組み込むことによって、計画を総合的に遂行することにしたい。
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