研究課題/領域番号 |
21K00055
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分01020:中国哲学、印度哲学および仏教学関連
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研究機関 | 東洋大学 |
研究代表者 |
白井 順 東洋大学, 文学部, 教授 (20534689)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
2023年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2022年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
2021年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
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キーワード | 秋山罷斎 / 明治崎門学派 / 吉田英厚 / 道学協会 / 道学遺書 / 崎門学派 / 明治の知識人 / 朱子学 / 舞田敦 / 崎門 / 明治の文献 / 秋山文庫 / 『東西雁魚』 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は(1)秋山罷斎は如何なる人物であったのか、彼の交流関係は如何なるものであったのかを明らかにしたいというのが研究課題の核心的な問いである。本研究の目的は(2)秋山文庫所蔵『東西雁魚』(秋山罷斎宛ての書簡資料)を解読し、秋山罷斎の思想や生涯を基礎的な文献に基づいて描くことにあり、これはこれまで誰もなし得ていない。本研究の主たる範囲は(3)秋山文庫収蔵の『東西雁魚』を解読し、それに相関する崎門文献の調査・分析を行うことにある。
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研究実績の概要 |
今年度は遺族から入手した資料をもとに、2023年3月に「吉田英厚『辨妄』について―明治期の崎門学派の一断面」を公刊した。明治十六年六月に佐藤直方系統の石井一素(周庵 )・池田謙蔵(渓水 )は道学協会を創設し、奥平棲遅庵・山口菅山が創立した四為会を再興した。道学協会は、崎門諸先輩の墓石の修復と文献収集活動を行う団体として定期的に集会し、さらに同年十一月に道学協会雑誌を創刊し、会員に配布していた。そして明治二十四年それまで筆写本でのみ伝えられていた諸先輩の遺書『道学遺書』を活版で刊行する活動を始めた。 『道学遺書』の刊行に秋山罷斎の弟子・吉田英厚と舞田敦の二人が関与していた。『辨妄』という新資料は、明治二十四年八月に吉田英厚が道学協会を退会する際に書かれたもので、吉田がどのような主張をして道学協会と決裂したのかを示す重要なものである。『道学協会雑誌』『道学遺書』に関わる吉田・舞田の退会は、秋山罷斎に無礼を働いたことが許せなかったというのが真相である。ところが『道学協会雑誌』に公開された退会の経緯には、秋山罷斎の名が全くなく、「諸先輩墓所一覧」に藤原惺窩・林羅山・中村惕斎・室鳩巣が含まれていたことに起因したことになっている。そこには、上総道学が自らの主張を正当化すために秋山への無礼を隠蔽した意図が感じられる。昭和以降、梅沢芳男ら上総道学の喧伝の力が強かったため、現在に至るまでその経緯に疑いの目が向けられることはなかったが、この吉田の『辨妄』の翻刻によって、石井周庵をはじめとする上総道学一派のセクト主義が白日の下にさらされたと言えよう。これらは、秋山罷免と吉田英厚の関係そして明治崎門学派の現状を知る重要な情報であり、秋山罷斎に宛てられた書簡の背景を裏づける資料でもある。以上が当該年度の実績の内容である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
明治の山崎闇斎派(朱子学者)である秋山罷斎がどのような交友関係を持ち、どのような講学活動をしていたのか、具体的な交流であったのかを書簡などの調査を行いながら進めている。筆者は拙稿「近代崎門学者の肖像―秋山罷斎」(『東洋思想文化』八号)において、桑名市立図書館所蔵秋山文庫の資料的価値と明治期の闇斎派研究における秋山罷斎の重要性を論述した。今年度は遺族から入手した資料をもとに、吉田英厚『辨妄』を分析し、明治崎門学派の団体である道学協会との関係を明らかにした。目下、書簡集である『東西雁魚』目録の作成作業を進めているが、不鮮明で解読不能な箇所も多く、難航している。 今年度入手した資料は、『東西雁魚』には含まれない明治16年頃~24年のもので大変貴重である。この資料によって道学協会の人たちとなぜ秋山は交流があったのかという背景がわかった。研究テーマである『東西雁魚』に収録される書簡と突き合わせることで、秋山罷斎と吉田の関係性や崎門学の状況が明らかになったことは大きな成果である。またさらに、これまで誰も指摘していないことではあるが、桑名市立図書館秋山文庫と大東文化大学図書館市村文庫の関係性も言及した。以上の二点に関して確認が取れたことは大きな進展だと言える。現在それらと『東西雁魚』および秋山文庫との関係を調査しているところである。
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今後の研究の推進方策 |
研究開始前から懸案事項ではあったが、秋山罷斎の基礎的文献研究を進めるためには、協力者や支援者が必要である。不明な事象が多すぎて、秋山罷斎の人間関係のみならず、書簡解読の手助けをする人材が必要である。昨年度書簡調査の際には、手助けを得ながら進めたが、量が多すぎて不明な点も増えるばかりで、あまりはかどっていない。一昨年・昨年と新型コロナの影響で、充分な現地調査を行えなかった。当該年度は現地調査はもちろん行う予定ではあるが、『東西雁魚』の整理については基本的な事項に留め、詳細については今後の課題にしていく方針で進めていくことにした。また解読については、範囲を最小限度に簡略化して、重要なものに絞って紹介する形で報告書をまとめる計画である。
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