研究課題/領域番号 |
21K00056
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分01020:中国哲学、印度哲学および仏教学関連
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
永冨 青地 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (50329116)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2022年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2021年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | 佐藤一斎 / 大塩中斎 / 陽明学 / 日本陽明学 / 自筆稿本 / 大塩中斎批注大学 / 薛王二先生教言 / 安岡正篤 |
研究開始時の研究の概要 |
江戸後期の儒学者である佐藤一斎(坦)と大塩中斎(平八郎)は、日本の陽明学受容史において重要な役割を果たした人物であり、王陽明の思想研究のみならず、その文献研究においても大きく貢献している。 今回の研究においては、一斎・中斎両者の関係資料について系統的な調査を行い、未刊の文献を含む彼らの著作の文献的な考察と思想的な分析によって、彼らの陽明文献の収集・校勘などの研究作業および陽明思想に対する理解について全面的な考察を行い、さらに、従来、対立点のみが強調されてきた両者の陽明思想に関する理解と陽明学に対する研究方法における、見事なまでの継承関係を実証していきたい。
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研究実績の概要 |
本年度においては、永冨が作成中の大塩中斎稿本の所在目録に基づき、従来研究者が全く注目してこなかった大塩中斎の自筆稿本である慶應義塾図書館所蔵大塩中斎批注『標註伝習録』に関して、同書に記されている大塩中斎批注の全文を翻刻の上、「慶應義塾図書館所蔵大塩中斎批注『標註伝習録』について」(『陽明学』34号、2024年3月)において、同書の内容とその意義について、論文の形で学界に対して紹介を行った。同論文は発行後間もないにもかかわらず、すでに日本思想研究者、陽明学研究者、さらには文献学研究者から好意的な反応が寄せられており、従来同社本の存在を全く認識していなかった学界において、一定のインパクトを与えたものと自負している。 なお同論文においては、大塩中斎の思想のキーワードというべき「太虚」の概念に対する理解が、王陽明(王守仁)の理解とは異なるものであることを指摘したが、この指摘に対して、中国哲学の研究者から好意的な反応が寄せられている。 また、陳来博士の随筆の翻訳である、陳来(著)、永冨青地(訳)「余英時先生との学術交流雑憶」(『環日本海研究年報』29号、2024年3月)の永冨による解説においては、著名な中国学研究者である余英時氏が永冨の論文によって、佐藤一斎の作成した写本である『陽明先生遺言録』を認識することができ、同書からの引用によって、氏の陽明学研究を進めていった様を示し、本研究の国際的な意義を明らかにすることができた。そしてこのことは逆に、日本国内の学界に対して『陽明先生遺言録』の再評価を促すこととなった。 以上二点の論文及び翻訳の解説によって、本年度における研究は、国内外の学界に対して一定のインパクトを与えることができたものと考えられる次第である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究は、「研究実績の概要」においてすでに説明したように、既に発表した論文、翻訳などに関しては、国内外の学界からも好意的な反応を受けている。 しかしながら、新型コロナウイルスの流行に伴い、中国の図書館などの所蔵機関が閉鎖、あるいは閲覧の制限などをおこなっているため、遺憾ながら中国における調査が行えないままとなっている。 そのため、できる限り国内の資料のみによって研究を進めてきたものの、国内の資料のみによっては代替のきかないものも存在するため、今年度においてはできる限り現地調査を行い、日本国内の資料との比較によって、研究の完成を目指す次第である。
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今後の研究の推進方策 |
上記の「現在までの進捗状況」においても示したように、新型コロナウイルスの流行後、中国国内の図書館などの所蔵機関が善本資料の閲覧の停止、あるいは制限などの方針を打ち出したため、中国国内での調査が行えないままとなっている。 そのため今年度においては現地調査を行うことを目指すが、それが困難な場合には、現地の研究者に依頼して複写物を入手するなどのできるかぎりの方策を考え、研究の完成を目指すこととしたい。 。
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