研究課題/領域番号 |
21K00057
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分01020:中国哲学、印度哲学および仏教学関連
|
研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
長谷川 隆一 早稲田大学, 文学学術院, 講師(任期付) (40897013)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
|
配分額 *注記 |
1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2023年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2022年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2021年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
|
キーワード | 性三品説 / 群書治要 / 処士 / 六朝 / 後漢 / 王充 / 寛猛相済 / 人間観 / 漢魏六朝 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、前漢中後期から南朝梁代までを性三品説の成立から、性と才が分離した魏晋期の才性四本論を超克して、性三品説下における「人間観」が完成した時代であるという思想史的仮説に立脚する。その上で、前漢後期から南朝梁代までの儒教的著作を取り上げ、文献実証を方法としつつ、性三品説という思想的常識下において、個人の努力による現状改善と性三品説の矛盾をどのような論理で超克し、それを踏まえた上での思想家個々の「人間観」が如何に展開したのかという問題を明らかにするものである。
|
研究実績の概要 |
本研究は、漢魏六朝期の思想家たちの人間観において、性三品説が基底とされていたことを前提としている。ただし本年度は、性三品説だけでなく、性三品説を生み出した土壌である当時の社会と唐代の編纂資料を中心に研究を行った。①性三品説を生み出した土壌、現実的背景。②唐代に編纂された『群書治要』に引用されている思想家たちの著作。 ①については、「後漢~六朝における処士」という報告を第74回日本中国学会大会(於:早稲田大学小野記念講堂)にて行った。処士とは、本来、「官吏でもなく民でもない人」を指したが、従来の研究は処士が無位無官にも関わらず、他を凌ぐ社会的地位を得ているように見えることを重視し、特別な地位を与えてきた。これに対し本研究では、先行研究が与えてきた様々なベールをはぎ取り、処士は当時においても、「官吏でもなく民でもない人」であったことを指摘し、あわせて、六朝期における処士と逸民の同一化が進行したことも述べた。 ②については、「『群書治要』の選集意図と具体的事例の検討 ――序文と『群書治要』引『潜夫論』を中心として――」という報告を第三回中日古典学ワークショップ〔第三届中日古典学工作坊〕(オンライン開催)にて行った。『群書治要』は、貞観五(六三一)年に、太宗の勅命により、魏徴等が編纂した書物である。内容は、経書から諸子のうち、上古から晋に至るまでの書物より治政の要点を抜粋したものとなっている。本研究は、『群書治要』に何故『潜夫論』という当時あまり有名ではなかった書物が収録されたのかを問うたものである。『潜夫論』が収録された理由は『潜夫論』に見える「徳治を法治に優先させる姿勢」が、魏徴の問題意識に合致したことによる。そして、それは実は『潜夫論』に留まらず、『群書治要』に収録される諸子も同様であると指摘した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
「やや遅れている」を選択した理由は、三つある。 第一の理由は、新型コロナウイルスの影響である。これにより、研究全体として、進捗が遅れざるを得なかった。 第二には、本年度は性三品説を生み出した土壌である当時の社会と唐代の編纂資料を中心に研究を行ったため。これらの研究は確実に大きな意義があったものの、「人間観」そのものの研究ではなかった。 第三には、「人間観」に直接に関連する著作の精読に多くの時間を割いたこと。ただ、資料の精読なしに報告・論文は完成しないため、この一年間は意義を有している。
|
今後の研究の推進方策 |
本年度行った「人間観」に関する著作の精読をもとに、学会報告・論文発表を行う。とくに、先秦~六朝期の関連著作を改めて精読したことにより、大局的な視点から性三品説の萌芽から形成、成立を見通すことがすでにできている。次年度はこれをもとに、『東方学』・『日本中国学会報』など、斯学で高い評価を有する媒体に投稿していきたい。
|