研究課題/領域番号 |
21K00075
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分01030:宗教学関連
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研究機関 | 大谷大学 |
研究代表者 |
木越 康 大谷大学, 文学部, 教授 (90269762)
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研究分担者 |
本林 靖久 大谷大学, 真宗総合研究所, 研究員 (30626833)
徳田 剛 大谷大学, 社会学部, 准教授 (60346286)
藤枝 真 大谷大学, 文学部, 教授 (80351245)
藤元 雅文 大谷大学, 文学部, 准教授 (80410976)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2023年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2021年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | 宗教動態 / 人口減少地域 / 仏教寺院 / 他出子 / 宗教意識 / 墓制 / 葬送儀礼 / 神社 / 過疎 / 寺院 |
研究開始時の研究の概要 |
過疎化が進む地域では、その運営や維持に関していくつもの課題を抱え、将来的な人口減少の進行とともにそれらはさらに深刻化することが予想されている。特に解体の危機に瀕する地域住民はより多くの不安を抱えるが、解決すべき課題には、「先祖とのつながり」や「終の棲家(逝き場)」の喪失など、人々の死生観や宗教観を含んだものが散見される。 本研究は、3年間の研究期間において、人口減少地域に対する調査分析を通して、その宗教動態(宗教意識や宗教的役割の動揺や変容)を把握し、さらに人口減少地域の住民が抱く宗教的不安等に対する寺院の社会的役割について考察を行うものである。
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研究実績の概要 |
人口減少が進む地域コミュニティにおいて、「地域と住民の身体に染み込んだ宗教感情」にどのような動揺が起こっているのかを調査し、仏教をはじめとする伝統宗教の今後の役割や持続可能性について総合的研究を行うことを目的としている。人口減少が進む地域(中山間地域や島嶼部など)では、その運営や維持に際していくつもの課題を抱えており、将来的な人口減少のさらなる進行とともに深刻化することが予想される。本研究は、このような人口減少が地域・住民に与える影響を、日本の伝統的地域コミュニティの秩序形成と維持に重要な役割を果たしてきた仏教寺院に注目して、宗教学的視点から明らかにするものである。宗教学・歴史学・地域福祉学・文化人類学・真宗学と、他分野の研究者による共同研究の形をとっているが、これまでも調査結果に対して多角的な視点からの分析を行ってきた。成果はすでに複数の論文と学会発表(日本宗教学会パネル企画)で公表を行ってきたが、今後も共同研究体制に基づく機動力と多角的分析力を駆使して、人口減少地域の宗教動態(宗教意識や宗教的役割の動揺や変容)を調査し、地域住民の宗教的な事象に対する不安解消に向けた仏教寺院の新しい形での社会的役割について考察を加えていく。 令和5年度は、調査対象地域に研究員を派遣して聞き取り調査を実施すると共に、日本宗教学会第82回大会において「人口減少地域における宗教意識の揺らぎ」と題するパネル発表を行った。特に聞き取りに関しては、調査対象地域から離れた場所に生活拠点を移した、いわゆる「他出子・出身者」を中心に実施し、宗教意識の継承問題の調査に着手した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
計画初年度は新型コロナウイルス感染症の影響によって、特に高齢者が多く居住している調査対象地域へと出向くことが困難となった。したがってSNSを活用した調査や郵送による調査などを行って、住民の宗教意識を把握することに努めた。直接の聞き取りが叶わなかったが、結果としてより広範な範囲で宗教伝統に対する意識調査のデータを収集することが出来た。当初は調査において出遅れた感が拭えなかったが、研究の2年次(令和4年度)および3年次(令和5年度)以降は、感染症による被害や不安が一定程度収まったことにより、順調に、住民への聞き取り調査を行うことが出来ている。 令和5年度は、「他出子・出身者」を中心とした聞き取り調査を開始することが可能となり、宗教意識の次世代への継承問題の研究に着手することが出来ている。9月に開催された日本宗教学会第82回大会では研究に関する中間的な報告を行ったが、同年度後期の調査によって、宗教動態の「揺らぎ」に関して、より多くの情報を収集することが可能となった。当初の目的に沿った研究成果が、より深い分析のもとで行われることが期待される。
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今後の研究の推進方策 |
新型コロナウイルス感染症拡大の影響によって当初予定していた新規調査対象地へのアプローチは若干の遅れをみせているが、郵送調査などの新しい試みによって、かえって多くの協力者を獲得することが可能となっている。また、一部地域住民とは調査に対する信頼関係をも構築することができており、協力者の紹介も得ている。これらによって現在は、地域的にも世代的にもより広い範囲での住民調査を行うことが可能となっている。当研究班では、調査対象過疎地域に現在も居住する住民を0世、過疎地域で生まれ育ちながら他地域へ転出した者を1世(他出子)、過疎地域での生活経験のない地域関係住民を2世(0世の孫・1世の子)と呼んでいる。 令和5年度以降の研究では、既述のような調査の実績をもとに、0世代への聞き取りから、1および2世代への聞き取りへと調査対象を移行させている。特に現在の調査対象者は、調査対象地域との行き来が比較的容易である近隣転出者に限っておこなっていて、現状では4件の聞き取りを終えている。 令和6年度は、さらに協力者の範囲を広げ、1および2世代への聞き取りを進めたいと考えている。すでに紹介者が複数いるため、実際に現地調査に赴き、データを収集して分析を試みることになる。それによって、地域の未来を担う(であろう)層を対象とした宗教意識調査が進むものと期待される。感染症拡大の影響によって特に現地での調査活動が1年以上停滞したため、現在は期間を1年延長して研究活動を継続させている。今後さらに積極的な現地調査を進め、仏教を中心とした伝統宗教の未来の形を明らかにしていく。
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