研究課題/領域番号 |
21K00084
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分01040:思想史関連
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研究機関 | 東京学芸大学 |
研究代表者 |
上村 直樹 東京学芸大学, 教育学部, 研究員 (40535324)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2023年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2021年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
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キーワード | アウグスティヌス / 教父 / キリスト教 / 古代末期 / 心性 / 精神の修練 / 教導 / 自己への配慮 / 古代哲学 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、哲学史家ピエール・アドによるヨーロッパ古代哲学史研究に変革をもたらした「精神の修練」研究(またアドの影響下「自己への配慮」の系譜に着目したミシェル・フーコーの古典思想研究)が犯した哲学史的なアナクロニズムを克服するため、その主たる研究対象であった教父アウグスティヌスのテクスト分析に基づき古代の哲学的な営みを捉える新たな視座を提起する。 「精神の修練」が実践する主体の「生き方」を変容するというアドの提唱は、内なる個という近代的な「自己」概念を読み込むという方法上の誤謬を犯している。このアナクロニズムを解消し、実践的な知恵を求める「生き方」を基礎づける体系について考察する。
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研究実績の概要 |
研究第二年度にあたって研究代表者・上村直樹は、COVID-19の世界的な感染拡大によって変更した研究計画のもと、順序を入れ替え先行させる課題B「アウグスティヌスにおける「精神の修練」「自己への配慮」とは何かについて」と、後続する課題A「アドの「精神の修練」研究とフーコーの「自己への配慮」研究の孕む問題性について」それぞれについて、遂行した成果の一部を国外においてオンライン形式によって開催された学会において発表した。そして研究者との意見交換を通して、研究最終年度に刊行を予定している冊子体報告書の内容を検討することに着手した。 上村直樹はまず2022年5月に開催された北米教父学会における発表の準備において、アウグスティヌスの主著の一つ『神の国』研究の最新動向について調査を進めながら「自己への配慮」について考察し、その成果を発表した。つづいて同じ5月末に開催されたカナダ教父学会における発表の準備において、課題Aに関連する鍵概念「パレーシア」に関する研究動向について調査を進めながら「殉教」と古代末期のキリスト教的な心性の関係について考察し、その成果を発表した。そして各々の機会における研究者からの批判と意見交換を通して、課題Aと課題Bを相補的に検討するという本研究の妥当性を検証した。 年度後半には北米教父学会の機関誌であるJournal of Early Christian Studies 編集委員から依頼された書評の執筆を通して、当初の研究計画において設定していた研究第3段階の課題C「アウグスティヌスにおける「教導」とは何か」に着手するとともに、課題Bをアウグスティヌスの主著『神の国』の分析との連関において考察するという研究計画の拡張可能性について検討した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究初年度に変更した課題Aと課題Bに取り組む順序のもと、先行して着手した課題B「アウグスティヌスにおける「精神の修練」「自己への配慮」とは何かについて」と後続して着手した課題A「アドの「精神の修練」研究とフーコーの「自己への配慮」研究の孕む問題性について」それぞれについて、研究第二年度までに遂行すべきと策定した作業の大半を、多少の修正を伴いながら遂行することができた。また当初国外欧州において実施すると計画していた文献資料調査について、国内外のインターネットを介してアクセス可能な資料の探査が想定以上に順調に進んだことによって、その作業を踏まえた成果の一部を国外のオンライン形式で開催された学会において発表することができた。 当初の研究計画において設定していた研究第3段階の課題C「アウグスティヌスにおける「教導」とは何か」の考察に取り掛かることによって、最終年度の研究計画を着実に履行する準備を整えた。また依頼された書評原稿の執筆作業を踏まえ、研究最終年度に行う予定の国外における学会発表のアブストラクトを考察することができた。 さらに「研究実績の概要」において報告した一連の研究成果についてウェブサイトを通して周知するために制作した枠組みを活用し、そのコンテンツを充実することにつとめるとともに、人文学系研究者が多数参加する世界的な SNS <academia.edu>のページを通して周知するようにつとめた。
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今後の研究の推進方策 |
以上の研究の進展を踏まえて当初の計画どおりに課題C「アウグスティヌスにおける「教導」とは何か」にとりくむ予定である。また、当初の計画を拡張する可能性が検討され始めたことも踏まえて、これまで以上に研究発表の相互の関連性について配慮しつつ、欧文での研究成果の国際諸媒体への投稿、出版に注力していく。 研究最終年度においてもこれまで同様海外の研究者との意見交換を密にすることによって、研究の過程で浮かび上がってきたテーマとして、宗教的な次元と世俗的な次元とが複層的に交錯している古代社会における心性の実態にアウグスティヌスが対処した方策の実態を検討すると同時に、アウグスティヌスの「教導」について現代的な観点から再考する課題についても検討することに取り組む。また、課題Bとアウグスティヌスの主著『神の国』との連関を探るという研究計画の拡張可能性についても引き続いて検討を進める予定である。 これらの研究を推進するにあたってはテキストデータベースをもちいることによって分析の効率化をはかるとともに、研究代表者が参画している環太平洋アジア地域の研究者ネットワークにおける情報交換の仕組みを活用する。
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