研究課題/領域番号 |
21K00087
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分01040:思想史関連
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
石黒 盛久 金沢大学, 国際学系, 教授 (50311030)
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研究分担者 |
厚見 恵一郎 早稲田大学, 社会科学総合学術院, 教授 (00257239)
鹿子生 浩輝 東北大学, 法学研究科, 教授 (10336042)
村田 玲 金沢大学, 人間社会研究域, 客員研究員 (20507892)
横尾 祐樹 早稲田大学, 政治経済学術院, 助手 (40962030)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2023年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2022年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2021年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
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キーワード | マキアヴェッリ / 宗教 / 預言 / 変革 / ルネサンス / 政治思想 / 人文主義 / フィレンツェ史 / 終末論的予言 / フィレンツェ / 政治文化 / サヴォナローラ / フィレンツェの神話 / 政治的予言 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究の目的は、フィレンツェにおける修道士サヴォナローラとその改革運動という、マキァヴェッリが体験した歴史的現実を背景に、後者の思想における宗教の意味を再検討する点に主軸を置く。加えてマキァヴェッリの著作の世俗的・宗教的議論を当時のフィレンツェの多様な価値観の中で包括的に検討する。こうした一連の作業を通じて、マキァヴェッリという一思想家の再解釈にとどまらず、通常〈近代の曙〉と把握されるフィレンツェ・ルネサンスの政治文化史的意義を、単なる進歩主義とは異なる文脈からとらえなおしたい。
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研究実績の概要 |
期間中3回の研究集会を開催した。業績としてはまず代表者石黒は、共同研究グループの成果の公表の一環として、論集『マキアヴェッリと宗教-社会形成に〈神〉は必要か』の編集作業に従事し、既発表論文二編を改めて寄稿した。また論集Boteriana IIIに、マキアヴェッリ政治論の継承者ボテーロに関する論考"Da Machiavelli a Botero. La Ragion di Stato di Botero e le principali caratteristiche della filosofia politica italiana nel tardo Cinquecento"を寄稿すると共に、国際シンポEuropa ed Estremo Orienteにおいてボテーロの文明観に関する報告を行った。加えてG・ペレグリーニ氏の来日報告「サヴォナローラ: 預言・改革そして専制への抵抗」の翻訳を公表している(『エクフラシス』14)。 分担者厚見と横尾は上記論集『マキアヴェッリと宗教』にそれぞれ論文を寄稿するとともに、横尾は同論集の付録としてボンターノ『君主について』の翻訳をも公開した。さらに横尾は昨年開催された二つの国際学会において、マキアヴェッリに関する発表を行っているが、中でも国際マキアヴェッリ学会における発表は本共同研究にかかわる重要な発表である。同じく分担者である鹿子生も上記論集『マキアヴェッリと宗教』に論考「統治体・腐敗・回復」を掲載し、政体の盛衰過程における宗教の意義を論じた。 研究協力者村木は昨年度中精力的に4回の学会発表を行ったが、特に9月の本共同研究セミナーでの発表は重要な寄与となった。また上記論集への投稿「ミクロストリアという方法論は思想史研究に応用できるのか」に加え、『現代思想』掲載の村木の論考もまた、本共同研究の核心に関わる重要な貢献と判断している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
先の研究実績欄にも記載したように、本共同研究メンバーは共同研究全体の趣旨を念頭に置きつつ、各自の研究を着実に進め実績を重ねその成果を国際的な学術シーンに積極的に発信しており、研究計画は当初想定したより順調に展開している。なかんずく論集『マキアヴェッリと宗教』という形で、この状況を視覚化し確認できたことは我々を力づける事案であった。特に近日は研究集会に際して、既に共同研究に参画している者以外の、多くの若手のマキアヴェッリ研究者、ルネサンス研究者、政治思想研究者の参画も得ており、本共同研究が我が国におけるマキアヴェッリ研究の重要なプラットホームに成長しつつあることが実感できる。また研究分担者各自が開拓した研究上の協力関係を媒介に、本共同研究が海外の研究者との共同研究の窓口となる機運も生じてきた。こうした一連の動向を通じ、「ルネサンス期における政治と宗教の関係」という共通主題に関する、参画者相互の理解の共通性とともに相違も次第に見えてきた。またマキアヴェッリ、あるいはマキアヴェッリと対比されるサヴォナローラに対する関心のみならず、この問題を解くにあたってそれをめぐる当時の更に広い政治文化史的状況の理解の必要性も浮かび上がってきた。こうした現状を乗り越える、新しい〈課題〉の浮上の認識もまた、本共同研究が順調に進化発展していることの証左と言えよう。
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今後の研究の推進方策 |
上記のように研究は計画以上に順調に成果を上げてきている。そこで明らかになった派の共通テーマに対する、参画分担者各自のアプローチや解釈の共通性と差異の双方であった。向こう一年はこの共通性と差異を意識しつつ、なるべく頻繁に遠隔・対面・合宿等の各種のミーティングを繰り返しつつ、議論の質を高めることを試みていきたい。なかんずく未だマキアヴェッリの宗教性の探査に焦点が当てられ、彼の政治/宗教観を深掘りし考察する重要な合わせ鏡としての、サヴォナローラの政治/宗教観の掘り下げが不十分にとどまっていることは大きな課題である。以前も指摘したがマキアヴェッリのテクストの中には、サヴォナローラの著述や説教に用いられた、範例や論法、語彙や文体などが豊富にみられるる両社のテクストの突合せの中で、マキアヴェッリの思想を、ワインスタインが「フィレンツェの神話」と名付けた、フィレンツェの宗教政治文化の伝統のコンテクスト中のマキアヴェッリの思想位置づけの考察に進めたい。またこうしたフィレンツェの伝統宗教政治文化の性格を解明する重要な手掛かりとして、15世紀初頭フィレンツェに手活躍した人文主義的秘書官たちと政治=宗教問題とのかかわりの解明も重要である。これらの課題の取り組みのまとめとして、今年度末に締めくくりのシンポジウムを開催するとともに、そこで浮かびあがる論点を核に次なる共同研究展開のシーズを開拓したい。一つの大きな焦点が彼の政治論における階級間の政治的葛藤とその克服の問題である。こうした葛藤の克服の切り札として、〈宗教〉は政治学の考察の対象となるが、その際問題となるのが、〈宗教〉が葛藤の表層的弥縫策に過ぎないのか、葛藤の根源的克服機能を持つものであるかという点である。こうした点が新たな共同研究の起点となろう。
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