研究課題/領域番号 |
21K00092
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分01040:思想史関連
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研究機関 | 北海学園大学 |
研究代表者 |
佐藤 貴史 北海学園大学, 人文学部, 教授 (70445138)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
2024年度: 260千円 (直接経費: 200千円、間接経費: 60千円)
2023年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2022年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2021年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
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キーワード | ユダヤ学 / アブラハム・ガイガー / イマヌエル・ヴォルフ / 起源と発展 / ユダヤ学高等学院 / フェルディナント・クリスティアン・バウル / 歴史叙述論 / 歴史主義 / プロテスタント神学 / フェルディナンド・クリスティアン・バウル / マルティン・ブーバー / 『我と汝』 / ユダヤ神学部 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、歴史学的・文献学的方法論を用いてユダヤ教を批判的に考察したユダヤ学の構造に着目しながら、宗教思想史的・学問史的観点から近代ユダヤ教の継承・発展・断絶の歴史を明らかにする。具体的にいえば、本研究は改革派ユダヤ教のユダヤ学者アブラハム・ガイガーのテクストを主に分析することで、彼のユダヤ学に内在する〈ユダヤ教の宗教的・超越的規範性〉と〈ユダヤ教の歴史的研究〉の緊張関係、そしてユダヤ学を近代学問として基礎づけようとした19世紀ドイツのユダヤ学者の学問的努力と困難を解明する。
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研究実績の概要 |
今年度はアブラハム・ガイガーの思想を中心にしたユダヤ学の研究状況の詳細な検討、彼の講義録に基づいたガイガーのユダヤ学の内実(イマヌエル・ヴォルフのユダヤ学との比較を含む)、ガイガーに影響を与えたプロテスタント神学者フェルディナント・クリスティアン・バウルの歴史叙述論の検討を行った。 第一に、そもそもわが国ではユダヤ学の研究がほとんど手つかずなので、その研究状況が詳細に述べられることはない。それゆえ、今年度は1818年以降のユダヤ学研究のなかでガイガーの思想がどのような評価を受けてきたかを明らかにした。その結果、ガイガーのユダヤ学はある論者から見れば「狭すぎる」と批判されるわけだが、それは批判者が体系的視点に立っているか、あるいは歴史的視点に立っているかでその評価が大きく左右されることがわかった。 第二に、ヴォルフの体系的なユダヤ学の構想と比較して、ガイガーのそれは歴史的な視点が強いと同時に、その背後に独特な形而上学的要素が存在し、この点に彼のユダヤ学の特徴があることを指摘した。すなわち、ガイガーにとってユダヤ学とはユダヤ教の〈起源〉と〈発展〉を歴史的に問う学問であり、これはヴォルフのユダヤ学とは異なる重要な形而上学的要素である。 第三に、バウルの歴史批判的なキリスト教研究のなかで重要な位置を占める歴史叙述論について、その概要をまとめた。バウルは古代から彼の生きた時代までの教会史を書いている。その教会史を支えるのが彼の歴史叙述論であり、そこでは理念と現象の弁証法的関係が重要な役割を果たしている。ガイガーのユダヤ教史もまた、いわゆる実証的な歴史に収まるものではなく、その形而上学的要素を無視して、彼のユダヤ学を理解することはできない。これらの点を見ても、バウルとガイガーの歴史理解には何らかの共通性があるのではないかということについて、一定の見通しを得ることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
19世紀ユダヤ学の研究は、諸外国ではすでに一定の蓄積がある分野である。今年度はその研究状況をさらに詳細に分析したことで、ガイガーのユダヤ学に対する批判がもっている複雑な哲学的・歴史的コンテクストを理解することができた。また、これまで彼の講義録は分析資料として重要な位置を占めることが少なかった。しかし、ガイガーのユダヤ学の目的、区分、定義はこの講義録の慎重な考察なしには明らかにできないという研究代表者の仮説には、やはり十分な学問的妥当性があることが判明した。これらのことを踏まえて、今年度の自己点検評価を「おおむね順調に進展している」とした。
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今後の研究の推進方策 |
令和4年度に引き続き、ガイガーのユダヤ学の文献学的研究に取り組む。とくに令和5年度はガイガーのユダヤ神学部構想を分析する。これは〈ユダヤ人の近代問題〉という性格をもっており、ユダヤ学が大学のなかで近代的な学問として認められるかどうかという、当時のユダヤ学者にとっての根本問題である。また、令和5年度は国内外での資料調査・学術交流が再開できそうな雰囲気ではあるが、感染状況を慎重に判断しながら研究を進めたいと考えている。
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