研究課題/領域番号 |
21K00093
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分01040:思想史関連
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研究機関 | 北海学園大学 |
研究代表者 |
鈴木 英之 北海学園大学, 人文学部, 教授 (60367000)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,990千円 (直接経費: 2,300千円、間接経費: 690千円)
2025年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2024年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2023年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2022年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2021年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
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キーワード | 浄土宗 / 偽書 / 仮託文献 / 聖冏 / 聖聡 / 中世 / 了誉聖冏 / 仏教 / 鎮西流 / 夢 / 正統 / 偽経 / 両部神道 / 近世 / 日本思想史 |
研究開始時の研究の概要 |
中世浄土宗の学僧・了誉聖冏(1341~1420)は、作者を浄土祖師などに擬した仮託文献を数多く使用していた。仮託文献とは、作者を古えの高僧や祖師になぞらえて作成された書物のことである。聖冏は、仮託文献を祖師の真撰として重視し、自らの浄土教学の形成において仮託文献から思想的な影響を強く受けていた。本研究では、聖冏が依拠した仮託文献を単なる偽書として等閑視するのではなく、聖冏教学を構成する重要な要素として位置付け、その思想的特色を解明し、最終的に中世浄土教学における仮託文献の位置付けを解明する。
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研究実績の概要 |
了誉聖冏(1341-1420)は、浄土宗鎮西流白旗派の学僧だったが、作者を祖師たちに擬した仮託文献を多用して自らの正統を示した。本研究は、聖冏が依拠した仮託文献を偽書・偽経として等閑視するのではなく、聖冏教学を構成する重要な要素として位置付け、その思想的特色を解明し、最終的に中世浄土教学における仮託文献の位置付けを明らかにすることを目的とする。 具体的な研究内容は、①浄土宗における仮託文献の調査・解読、②聖冏浄土教学への仮託文献の影響と教理上の意義の解明、③聖冏の直弟子・酉誉聖聡の仮託文献受容との比較検討の3つである。上記のうち、令和5年度は①②を中心に進め、聖冏教学における仮託文献の展開と、江戸期での受容の姿について検討し、浄土宗の正統意識の形成について論じた。聖冏は菩提流支『麒麟聖財立宗論』や聖覚『聖覚名目』など浄土祖師に仮託された文献を多用している。それらの仮託文献は聖冏の自作ではないかとの説もあったが、筆者は、それらが聖冏以前から存在していたこと、浄土宗における正統を争った名越派の書目の中に見えることを明らかにできた。なぜ名越派の書物を、白旗派の聖冏が使用したのか、また名越派におけるそれら仮託文献の位置付けについて研究を続けている。 また聖冏と弟子である酉誉聖聡の間で、仮託文献の使用について差異が認められることが明らかになっている。聖聡は、聖冏がほぼ用いていないとみなされる『弥陀本願義疏』を盛んに活用し、聖冏教学(二蔵三法輪)を宣揚している。聖聡は聖冏教学をプロデュースした存在といえ、聖冏・聖聡の2人がいて初めて白旗の教学が広まったものと考えられるのである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
国際シンポジウム「世界にひらく日本宗教文化」では「正統の形成と偽書―中世浄土宗の事例から― 」と題して、聖冏の偽書(仮託文献)と正統意識との関連性について論じた。また拙稿「古歌「心だに」の受容―神道・仏教・本居宣長の事例から―」(『北海学園大学 人文論集』76号)では、中世から流布している古歌「心だにまことのみちにかなひなばいのらずとてもかみやまもらん」の受容相について、聖冏の引用例から近世の国学者・神道家の用例を比較検討し、それぞれの特色について論じた。これらの用例からは、中世の観念的で素朴な心神一致の思想とは異なり、近世では現実的に神を祀ることや、祈る事を念頭に置いたうえで人が神仏と通じ合うことの難しさを明らかにできた。人間と神仏との距離は、時代の特徴をあらわす重要な論点である。この古歌からは、中世・近世各々の時代と立場による神仏と人間との距離感の違いを垣間見ることができた。また讃岐覚城院にて聖教調査を行うなど、外部調査も行った。
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今後の研究の推進方策 |
今後は上記の成果をもとに、外部機関の調査を含めて研究を進展させる予定である。
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