研究課題/領域番号 |
21K00096
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分01040:思想史関連
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研究機関 | 上智大学 |
研究代表者 |
堤田 泰成 上智大学, 文学部, 研究員 (30897822)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,210千円 (直接経費: 1,700千円、間接経費: 510千円)
2025年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2024年度: 260千円 (直接経費: 200千円、間接経費: 60千円)
2023年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2022年度: 260千円 (直接経費: 200千円、間接経費: 60千円)
2021年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
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キーワード | エリウゲナ / テオファニー / キリスト教 / 一者 / 発出 / 還帰 / 宗教 / 神秘主義 / シュライアマハー / ショーペンハウアー / 新プラトン主義 / 西洋思想史 / 一性形而上学 / ヘノロジー |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、ショーペンハウアーの哲学を新プラトン主義思想の隠れた地下水脈として読み解くことで、西欧思想の歴史に新たな布置を描くことを目的としている。これまで日本では、彼を狭義の超越論哲学者として捉える見方が長らく主流を占めてきた。しかし近年の国内外におけるショーペンハウアー研究の趨勢の大きな変化を背景に、ここに来て彼を新プラトン主義思想の系譜を汲む哲学者として新たに捉え直そうとする機運が徐々に高まりつつある。本研究は、ショーペンハウアーの思想形成における新プラトン主義からの影響を彼の参照した文献資料に基づきながら考察し、新プラトン主義者としてのショーペンハウアー像を打ち立てることを目指す。
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研究実績の概要 |
3年目にあたる令和5年度は、ショーペンハウアー哲学におけるヘノロジー(一者論)的思考がどのような新プラトン主義的思想家からの影響のもとに形成されたのかを文献的に解明することに重点を置いた。とりわけ、9世紀の新プラトン主義的キリスト教思想家ヨハネス・(スコトゥス・)エリウゲナの主著『ペリピュセオン(自然について、自然区分論)』を論じた、「スコトゥス文選(Chrestomathia Scotiana)」と題されるショーペンハウアーの未公刊の草稿を中心に検討を行った。 「スコトゥス文選」におけるショーペンハウアーのエリウゲナに対するコメントを、当時彼が実際に参照していたゲイル版(De divisione naturae, Oxonii: E. Theatro Sheldoniano, 1681)の箇所と突き合わせながら読解し、ショーペンハウアーがエリウゲナの「神の無知」を自らの「盲目的な意志」の概念と重ね合わせて理解していたこと、またエリウゲナの「テオファニー(神の顕現)」を「テレマトファニー(意志の顕現)」という名称のもとに独自に読み替えていたことなどを確認した。またショーペンハウアーの『意志と表象としての世界』初版の自家用本に記されたエリウゲナへの言及も併せて検討することで、ショーペンハウアー哲学の「意志の自己認識」に新プラトン主義・キリスト教における「〈一者/神〉の自己認識」との共通性が見出されることを明らかにできた。 本年度はこうした成果を新プラトン主義協会の学術大会で発表した他、ルーマニアで開催された国際学会4th World Congress on Logic and Religionにてショーペンハウアーとキリスト教芸術に関する発表を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究はショーペンハウアーの思想形成における新プラトン主義からの影響を、彼が参照していた原典資料に基づきながら実証的に考察することを基本方針としている。これはショーペンハウアーと新プラトン主義との思想的親近性を単なる比較思想的な考察に止めないための予防線であるが、その意味においても今回、ショーペンハウアーの新プラトン主義受容の一端をエリウゲナ・「スコトゥス文選」という具体的な思想家とテクストから解明することができた意義はきわめて大きい。今後も同様にショーペンハウアーと新プラトン主義の影響関係をさまざまな資料から読み解くことで、19世紀初頭のドイツ思想界における新プラトン主義思想の伝播と受容、またその後の新プラトン主義思想の系譜の展開の解明がなされるものと期待できる。以上のような理由から、進捗状況を「おおむね順調に進展している」とした。
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今後の研究の推進方策 |
本年度までの研究成果からショーペンハウアー哲学における新プラトン主義・ヘノロジー的思考を比較的明瞭に見出すことができたため、今後はショーペンハウアーに影響を受けた19世紀末の哲学者・思想家を新プラトン主義の伝統と系譜を汲むものとして新たに位置づけ、再評価することも視野に入れて研究を進めていく。とりわけ、「ショーペンハウアー学派」と呼ばれる哲学者・思想家たちがショーペンハウアー哲学におけるヘノロジー的思考をどのように受容していたのかを重点的に解明し、新プラトン主義思想の伝播と受容をより俯瞰的な観点から捉え直すことを試みる。そのためにも引き続き文献・資料の地道な調査、国内外における学会での成果発信と意見交換に努め、研究のさらなる推進を図ることにしたい。
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