研究課題/領域番号 |
21K00104
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分01040:思想史関連
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研究機関 | 梅花女子大学 |
研究代表者 |
河野 一紀 梅花女子大学, 公私立大学の部局等, 講師 (30738050)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
3,640千円 (直接経費: 2,800千円、間接経費: 840千円)
2023年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2022年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2021年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | ジャック・ラカン / ジークムント・フロイト / 精神分析 / 反還元主義 / 文化人類学 / 認識論 / マルセル・モース / クロード・レヴィ=ストロース / 精神医学 / 無意識 / 決定論 / フランス思想 / 精神分析史 |
研究開始時の研究の概要 |
精神分析史のなかでフロイト-ラカンという思想系が確固とした位置を占めているように、ジャック・ラカンはそのキャリアを通じて徹頭徹尾フロイト主義者であったと考えられてきた。これに対して本研究は、ラカンにとって精神分析は当初、精神医学の要請を満たす具体的かつ科学的な心理学の構築のための参照項のひとつに過ぎなかったという事実に着目し、この構想を支えた認識論的態度こそがフロイト受容とその後の理論展開を規定しているという仮説のもと、フロイト原理主義者という従来像とは異なるかたちでラカンの理論的実践を描き出し、その今日的意義を明らかにする試みである。
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研究実績の概要 |
2023年度も引き続き、反還元主義という視座がラカンの思索の展開に与えた影響について研究をおこなった。当初の研究実施計画では、精神分析と科学との関係についてのラカンの思索の検討を通じて、反還元主義という認識論的立場がもつ現代的意義と課題について精神分析史・精神医療史の観点から検討することを予定していた。 しかし、資料の整理・読解や論文執筆に想定以上の時間を要したことに加え、1940-50年代のラカンのテクストの再検討を行ったため、当初の計画からの変更が生じた。結果的には次の3つの研究をおこなった。①前年度の研究を引き継ぎ、シャーマンと精神分析家を対比させて論じたレヴィ=ストロースの仕事がラカンに与えた影響について、とりわけ無意識概念の受容、精神分析の科学性に注目して検討した。これについては、追手門学院大学学生相談室紀要に論文として発表した。②ラカンのテクスト「心的因果性についての提言」(1946)の読解をおこなった。本テクストは、学位論文から出発したラカンが1953年に「フロイトへの回帰」を唱えるに至るまでの過渡期に位置づけられるものであり、その読解によってラカンにおける精神分析の受容についてより明瞭な理解が得られた。これについては、日本ラカン協会連続セミナー「『エクリ』を読む」第3回にて発表した。③ラカンのテクスト「フロイト的物、あるいは精神分析におけるフロイトへの回帰の意味」(1956)の読解をおこなった。本テクストは、1953年以来「フロイトへの回帰」というスローガンのもとでおこなわれてきたラカンの教えの概要を対外的に示す講演が元になっており、その読解によって精神分析家としてのラカンのオリエンテーション、とりわけ米国の自我心理学に対する立場と精神分析史のなかでのその意義が明らかになった。これについては、日本ラカン協会連続セミナー「『エクリ』を読む」第8回にて発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
先述の通り、当初の計画からの変更があったために、全体として当初の予定から進捗は遅れている。とはいえ、1940-50年代におけるラカンの理論形成を詳細に検討し、精神分析史におけるその位置づけを確認することができたことから、研究全体としては一定の成果を得ることができたと言える。
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今後の研究の推進方策 |
ラカンにおける精神分析と科学の関係、さらには、分析家養成と学派の問題について、1950-60年代の議論をもとに検討する。また、本研究の総括として、反還元主義の視座から明らかになるラカンの理論的実践の意義と射程について整理し、今日の心理臨床や精神医療に対するその臨床的含意を明らかにする。
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