研究課題/領域番号 |
21K00106
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分01050:美学および芸術論関連
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
濱田 真 筑波大学, 人文社会系, 教授 (50250999)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
2023年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2022年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2021年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
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キーワード | 輪郭線 / 古代ギリシア・イメージ / ヴィンケルマン / カンパー / 素描理論 / アレゴリー / 観想学 / 可視性と不可視性 / 情動性 / ラーヴァーター / ヘルダー / C.G.ハイネ / J.G. ヘルダー / 18世紀ドイツ |
研究開始時の研究の概要 |
J.J.ヴィンケルマンはドイツ古典主義芸術論を基礎づけた人物として知られるが、本研究では古典主義という枠組みを前提にするのではなく、18世紀後半のドイツにおける古代ギリシア・イメージをめぐるさまざまな議論に即してヴィンケルマン受容の諸相を探る。それによって当時の芸術論の奥行きと射程、古代ギリシア・イメージ形成の内実を明らかにする。
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研究実績の概要 |
本年度は、これまでの2年間の調査を踏まえて、輪郭線のとらえ方が古代ギリシア・イメージ形成にどのような役割を果たしたのかという点に焦点を絞って、18世紀後半のドイツにおけるヴィンケルマン受容のあり方について考察を進めた。あらためてヴィンケルマンの輪郭線理解の特徴を『絵画と彫刻におけるギリシア美術模倣論』と『古代美術史』を中心に探った。ヴィンケルマンにおいては「自然 Natur」が物質性と精神性という異なる方向で解釈されているが、それに対応して、輪郭線のとらえ方にも対立する二つの方向が見られること、すなわち、人間の肉体の備える運動性と同時に、それを超えた静的で無時間的な理念を示すものとして輪郭線が位置づけられていることが確認できた。さらに、美術における素描の技法との関連において、対象の部分間の比率の測定法という観点から輪郭線が論じられている点も明らかになった。同時に、ヴィンケルマンが抱いていた古代ギリシア・イメージも、このような輪郭線理解に対応して多面的・重層的なものであることが理解できた。 本年度はさらに、解剖学者で素描家でもあったペトロス・カンパーが描いた人間の頭蓋の素描に着目し、カンパーの頭蓋測定とヴィンケルマンの輪郭線理解の関係について考察した。ドイツ・ヴァイマルおよびベルリンの図書館での関係資料収集に基づいて、調査を進めることができた。特に、カンパーのアムステルダム素描アカデミーでの講義録を参照することで、当時の美術アカデミーや解剖学研究において、古代ギリシア美術についてのヴィンケルマンの理論がどのように受け止められていたか、その実情を探ることができた。 以上の調査を踏まえて、「ヴィンケルマンとその受容-18世紀後半から19世紀前半のドイツを中心に―」というタイトルのシンポジウム(日本ヘルダー学会後期研究発表会、2024年3月、於上智大学)で研究報告を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度の調査では、18世紀後半のドイツにおけるヴィンケルマン受容のあり方が、思想家によってさまざまに異なっており、いくつもの方向に分化していく状況を確認することができたが、本年度は、解剖学者であり素描家でもあったペトロス・カンパーの著作および図版に注目して、人間の頭蓋についての彼の理論において輪郭線が果たした役割について考察した。これによって、これまで調査を行ってきたラーヴァーターとヘルダーの輪郭線理解が、解剖学的かつ素描理論的な観点からどのように位置づけることができるかについてもある程度の見通しをつけることができた。 本年度は、「ヴィンケルマンとその受容-18世紀後半から19世紀前半のドイツを中心に―」というタイトルでシンポジウムを企画・準備し、登壇者として研究報告を行った(日本ヘルダー学会後期研究発表会、於上智大学)。登壇する他の研究者3名と内容面で準備を進め、当日は登壇者ならびに参加者との意見交換や質疑応答をとおして、昨年度までの研究結果と今年度の新たな調査資料を整理して見直すことができた。その過程で、18世紀後半のドイツにおけるヴィンケルマン受容について、さらなる調査が必要な点も明らかになった。特に、古代ギリシア・イメージ形成における造形美術と言語の関係、古代芸術の模倣と創造性の関係、18世紀後半から19世紀前半にかけてのヴィンケルマン受容におけるゲーテの位置づけ、これらの点については、今後さらに詳しく考察する必要があるだろう。
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今後の研究の推進方策 |
本年度の末に日本ヘルダー学会シンポジウムで研究報告を行ったが、他大学の研究者と意見交換を進めるなかで、特に以下の点についての調査が必要なことが明らかになった。 ・18世紀後半のドイツの古代ギリシア・イメージ形成における、造形芸術作品と言語の関係について。 ・輪郭線を中心としたヴィンケルマン受容におけるラーヴァーターの観相学、カンパーの頭蓋理論、ヘルダーの彫刻論の相互関係について。 ・古代ギリシア・イメージ形成における古代作品の模倣と創造性・独創性の関係について。 これまで収集した資料を、以上の観点から読み直し整理して考察を進め、研究をまとめる予定である。
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