研究課題/領域番号 |
21K00116
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分01050:美学および芸術論関連
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研究機関 | 女子美術大学 |
研究代表者 |
佐藤 紀子 女子美術大学, 芸術学部, 助教 (10365819)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2022-03-31
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研究課題ステータス |
中途終了 (2021年度)
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配分額 *注記 |
3,120千円 (直接経費: 2,400千円、間接経費: 720千円)
2023年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2022年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2021年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
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キーワード | 芸術と幾何学 / ACCOLTI / ユークリッド / 透視図法 / 絵画 / Accolti / 芸術理論 / 絵画制作 |
研究開始時の研究の概要 |
イタリアの数学者であり、画家、建築家も兼ねたPietro Accoltiは、"Lo Inganno degli Occhi" を1625年に執筆した 。この技法書は当時のイタリア語版が存在するのみであり、英語版を含め他言語への翻訳は未だなく、日本での研究は行われていない Accoltiの技法は、近代図法幾何学と比較すれば完全ではない理論も含まれているが、それは、当時の芸術家の直感的感覚を反映させた考え方であったと理解できる。 本研究では、第一にこの理論の全容を把握し、第二に、この理論における芸術家や建築家などの直感的、感性的な表現を可能にしていた近代の図形科学の考え方とは異なる部分に着目し、それを明らかにする。
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研究実績の概要 |
Pietro Accoltiの技法書の冒頭より三分の一ほどを翻訳した。翻訳のお陰で、著者の立場と執筆の目的が明かになった。本書は、数学的な証明に裏付けられた正確さとは相入れない考え方で、絵画の仮象空間を構築する技法について解説している。当時、正確な透視図法の技法書も執筆されており、美術の制作者に限られずに様々な分野に従事する人々に読まれていた。本書は、そのような数学的な側面を重んじるのではなく、より簡易的に同様の結果を幾何学により得ようとするものである。よって、この方法は、想像的な情景、とりわけ絵画の仮象空間の制作に有効であると考えられる。 Accoltiの場合は、絵画の基材となるキャンバスの一辺の長さを基準として、仮想の空間を想定している。つまり、描こうとする現実の情景などを用いずに、感覚として絵画の仮象空間に奥行き感を定めようとするものである。このようにキャンバスの一辺の長さを用いる理由を、「画家の好み」と記していることから、当時の画家たちが、正確な透視図法の作図方法よりも、簡易であると感じられる方法で画面に透視図法的な構図を構築して描いた可能性がある。そして、その方法を使うには、ユークリッドの定理を理解していなければならない。ユークリッドの知識は、当時の画家たちが素養として身につけられていた。この簡易な技法を用いれば、数学的に正しい透視図法で描いた結果と似たような構図を得ることができ、透視図法のように作図過程が複雑でなく、そして、作図に画面以上に広い場所を必要としない。よって、既知の知識を援用するだけで理解できたAccoltiの方法を画家たちが用いた可能性があると考えられる。
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