研究課題/領域番号 |
21K00123
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分01050:美学および芸術論関連
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研究機関 | 尚絅大学短期大学部 |
研究代表者 |
森 みゆき 尚絅大学短期大学部, その他部局等, 准教授 (00738552)
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研究分担者 |
国府 華子 愛知教育大学, 教育学部, 教授 (70282811)
山崎 浩隆 熊本大学, 大学院教育学研究科, 教授 (20555768)
佐藤 慶治 鹿児島女子短期大学, 児童教育学科, 講師 (10811565)
西槇 偉 熊本大学, 大学院人文社会科学研究部(文), 教授 (50305512)
藤瀬 泰司 熊本大学, 大学院教育学研究科, 教授 (30515599)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2022年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2021年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
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キーワード | 犬童球渓 / 犬童信蔵 / 近代日本 / 音楽教育 / 音楽教員 / 日本近代音楽史 / 音楽資料 / 作歌 / 唱歌 |
研究開始時の研究の概要 |
犬童球渓(1879-1943)は明治40年『中等教育唱歌集』所収《旅愁》の訳詞で有名だが、音楽教育に従事する教員でもあった。同時代の師範学校や高等女学校に勤務し楽曲や著作を残した他の音楽教育家と同様に、犬童に関する音楽学的な研究は未だ進められていない。本研究では、犬童研究の基盤となる基礎的資料を確立するために、関連資料のデータベース化とデジタル化を行い、デジタルアーカイブズの作成を行う。具体的には、作品、音源資料、本人及び第三者所有の関連資料群、雑誌や新聞等の言説等を網羅する。さらに、小・中学校の授業で活用可能な「教育用コンテンツ」を作成し、研究成果を教育現場に還元する。
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研究実績の概要 |
①犬童球渓記念館所蔵の資料整理:平成23年度人吉市教育委員会による人吉城歴史館特別展「犬童球渓展」の際の調査で「未整理」とされた資料群、犬童の四女トシ(1920-2016)関連の資料群の調査・整理を進めた。トシの資料群には家族や親族の物が混在していたため選別作業を行った。その結果、「未整理」に約30点(小学校時代の作文、落書き他)、トシの資料群に約100点(アルバム、原稿等)の関連資料を発見した。また、昨年度発見した資料(屋根裏等から約100点)のうち犬童が作歌を行う際に使用した独語3冊と英語2冊の歌曲集の調査を進めた。何れも表紙等がなく不完全な状態であるが、独語はEdition PetersによるErk's Deutscher Liederschatz1~3巻と判明した。 ②犬童球渓記念館所蔵以外の資料整理:犬童の関連資料を所蔵する玉名市歴史博物館、熊本県立図書館、人吉市内の学校について資料の所在確認や調査を行った。また、孫の梅澤敬一氏が収集した楽譜類の調査も行った。①で記した「犬童球渓展」の際に人吉市教育委員会が調査し管理してきた犬童球渓記念館の所蔵資料のデジタルデータを確認した。 ③作品目録の作成:球磨音楽同好会編「犬童球渓先生作詞索引」(昭和10年)を基に、雑誌、教科書、ピース譜に掲載された作品の実物確認を行い、今年度はピース譜の目録(全139曲)を完成させた。 ④教育用コンテンツの作成:犬童や作品が、出身地である人吉市内の小中学校における授業や行事等でどのように扱われてきたかについて調査し、今年度は中学校の音楽教諭と協同で教材開発を進めた。 ⑤作品研究等:①で調査したErk's Deutscher Liederschatに記された犬童による歌詞や音符の書き込みを分析し、学会発表を行った。また、研究成果報告会を開催し作歌、李叔同の《送別》、学校教育との関連について発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
現在、当初の予定より遅れている理由は3点ある。1点目は、初年度に新型コロナウイルスの影響により犬童球渓記念館他の実地調査が十分にできなかったことが今年度の進捗状況にも影響を及ぼした。 2点目は、同館の所蔵点数が本課題開始時の想定より遥かに多かったという点である。当初、平成23年度に人吉市教育委員会が調査した際に纏めた所蔵目録に掲載された約300点に加え、数点の関連資料の発見の可能性を想定していた。しかし、昨年度に約100点(出版楽譜、犬童の作歌の原譜である独語と英語の歌曲集他)、本年度に「未整理」の資料群から約30点、長女犬童トシの資料群から約100点が発見された。「未整理」の資料群には、犬童以外の筆跡の紙片が大量にあり、次年度では引き続き犬童の物を特定する作業を行う。犬童の筆跡のものが増える可能性もある。 3点目は、犬童が作歌や作詞、作曲を手掛けた作品数が本課題開始時の想定より遥かに多かったという点である。当初、約360曲(根拠は球磨音楽同好会編「犬童球渓先生作詞索引」昭和10年)と想定していたが、現在600曲弱の出版された作品を確認した。現在調査の途中であるが、作品総数は増える可能性が高い。
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今後の研究の推進方策 |
①犬童球渓記念館所蔵の資料整理:同館には犬童に関連する資料と特定できるものが増える可能性はあるが、今年度までに犬童の資料と特定できたものについての目録作成とデータベース作成を進める。同時に、アーカイブズ公開時に使用可能なデジタル画像の撮影を行う。 ②犬童球渓記念館所蔵以外の資料整理:①と同様に所蔵目録の作成とデータベース化のための作業を進めると共にデジタル画像の撮影を行う。 ③作品目録の作成:教科書及び雑誌に掲載された楽曲についての作品目録を作成する。 ④教育用コンテンツの作成:小学校における音楽科と社会科他の授業で活用できるデジタルコンテンツについては、引き続き小学校教員と連携しながら完成を目指す。 ⑤作品研究等:独語の歌曲集Erk's Deutscher Liederschatに記入された楽曲について分析を進めるとともに、英語の歌曲集2冊についても出版社等の同定作業を進める。さらに、犬童球渓記念館所蔵の日記、手帳、遺書、遺書の下書き等から、犬童と親交が深かったと推察していた人物等(田中銀之助、永井幸次、原田彦四郎、若狭萬次郎他)との関係が明らかになってきた。研究を進め、学会や論文発表を行う予定である。また、最終年度にあたる2023年度には研究成果発表としてレクチャーコンサートを計画している。作品、犬童自身の演奏記録、李叔同の《送別》、小学校の音楽科や社会科の授業等の観点からのレクチャーとそれに関連する演奏を織り交ぜた構成を考えている。
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