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風景と近代的メランコリーの美学

研究課題

研究課題/領域番号 21K00139
研究種目

基盤研究(C)

配分区分基金
応募区分一般
審査区分 小区分01050:美学および芸術論関連
研究機関立命館大学

研究代表者

仲間 裕子  立命館大学, 衣笠総合研究機構, プロジェクト研究員 (70268150)

研究期間 (年度) 2021-04-01 – 2025-03-31
研究課題ステータス 交付 (2023年度)
配分額 *注記
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2023年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2022年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2021年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
キーワードメランコリーの美学 / 風景 / 自然と人 / ドイツ・ロマン主義 / 崇高とメランコリー / ドイツ・ロマン主義の風景画 / 体験的崇高 / メランコリーと「生と死」 / メランコリー / カスパー・ダーヴィト・フリードリヒ / 崇高 / メランコリーの風景
研究開始時の研究の概要

カスパー・ダーヴィト・フリードリヒの風景画は崇高、超越への志向性を示し、孤独、死のイメージの表象として捉えられてきたが、《海辺の修道士》の2016年の修復作業の成果を踏まえて、新たな視点から作品に意図された主題について考えたい。また、カントの「崇高の美学」を再検討し、なかでも先行研究では重視されていない‘崇高とメランコリー’の関係性に注視し、近代的メランコリーの表象としてドイツ・ロマン主義風景の根本的特質を問う。

研究実績の概要

2023年度は4月と5月にハーバード大学で近代の風景表象とメランコリーについて引き続き調査を継続し、5月にはロッテルダムのエラスムス大学で開催された国際シンポジウム「新人世における人間の立場とその条件:自然、文化、テクノロジー」において、これまでの「風景と近代のメランコリーの美学」研究を反映させ、新人世と呼ばれる自然消失の時代に人類が抱く危機を、批判性を帯びたメランコリー的美学から報告した。また、10月にはミュンヘン中央美術史研究所でセミナー・レクチャーを行い、本研究の対象である近代ドイツの画家、カスパー・ダーヴィト・フリードリヒの《四季と人生の循環》ついて講義し、春から冬への自然の変遷に倣う幼児から老人の人間の生の循環にメランコリー思想が通底していることを示した。また、ドレスデン国立美術館から依頼され、8月から当美術館で開催されるフリードリヒ生誕250年記念展覧会カタログに岸辺と海とそれに続く彼方を描いた風景画は、死と永遠への内省の表現であることを明記した。
メランコリー思想に関連して、美術史においては16世紀の画家、アルブレヒト・デューラーの作品《メレンコリアI》は「思考絵画」として解釈され、「反省と主体」(ハルムート・ベーメ)、「多様な矛盾を担う存在としての人間を示す」(ブリギッテ・シュルテ)と分析されてきたが、一方でロマン主義のフリードリヒに関してはセンチメンタリズムの美術と考えられてきた。しかし、これまでの調査によって、同画家の風景画が代表作の《海辺の修道士》にみるように、不可知なるものを探求しようとする主体的なメランコリーの表象であり、このフリードリヒの芸術観が現在のアーティストにも影響を与えていることを確認できた。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

計画していた調査は、ハーバード大学、ミュンヘン美術史研究所で進んでおり、メランコリー的世界観は当初考えていた19世紀の風景画に留まらず、とりわけ戦後のアーティスト、ヨーゼフ・ボイスやアンゼルム・キーファーなどの風景表象に継承されており、今日のさまざまは社会現象における「危機」の時代の根底にメランコリー思想があることを理解した。近代、現代において自然と人間の関係は複雑に交差し、より社会的・政治的側面が反映されているといえよう。欧州の大学や研究所での報告、また美術館展カタログへの寄稿など、海外での業績は当初予定していなかったが、研究テーマにより一層、根源的なテーマとしてのメランコリーに向き合う機会を得た。

今後の研究の推進方策

2024年度には引き続きドイツでの調査を継続し、資料文献調査を中心にメランコリーの歴史、思想と風景との相互関係を考察する。ベルリンとドレスデン国立美術館で開催されるフリードリヒ展を見学するだけでなく、ベルリン国立美術館館長、ラルフ・グライス氏とドレスデン国立美術館主任キュレーター、ペトラ・クールマン=ヘディケ氏を訪ね、メランコリーをテーマに意見の交流を行う予定である。当年度に予定していた立命館大学国際言語文化研究所共催のカンフェレンスは海外の発表予定者の都合で2025年度に延期されるが、数回の研究会を開き、シンポジウムに向けて議論を進めていきたい。

報告書

(3件)
  • 2023 実施状況報告書
  • 2022 実施状況報告書
  • 2021 実施状況報告書
  • 研究成果

    (9件)

すべて 2023 2022 2021

すべて 雑誌論文 (1件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 1件、 招待講演 4件) 図書 (3件)

  • [雑誌論文] ゲルハルト・リヒターと「炎の氷」2022

    • 著者名/発表者名
      仲間裕子
    • 雑誌名

      コメット通信

      巻: 23 ページ: 9-10

    • 関連する報告書
      2022 実施状況報告書
  • [学会発表] Thoughts on Antropocene2023

    • 著者名/発表者名
      Yuko Nakama
    • 学会等名
      The Human Place in the Anthropocene and its conditions: nature, culture, technology
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] Reconsidering Caspar David Friedrich’s Cycle of the Four Seasons (1803)2023

    • 著者名/発表者名
      Yuko Nakama
    • 学会等名
      Central Institute for Art History, Munich (Lecture seminar)
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
    • 招待講演
  • [学会発表] Reading the images of Sesshu's Long Landscape Scroll: From a comparative perspective2023

    • 著者名/発表者名
      Yuko Nakama
    • 学会等名
      Harvard University Reischauer Institute of Japanese Studies
    • 関連する報告書
      2022 実施状況報告書
    • 招待講演
  • [学会発表] ドイツ・ロマン主義の風景画と自然2022

    • 著者名/発表者名
      仲間裕子
    • 学会等名
      自然と人のダイアローグ展(国立西洋美術館)
    • 関連する報告書
      2022 実施状況報告書
    • 招待講演
  • [学会発表] 「ドクメンタの美学と政治学」再考2021

    • 著者名/発表者名
      仲間裕子
    • 学会等名
      風景論研究会(立命館大学国際言語文化研究所重点課題プロジェクト)
    • 関連する報告書
      2021 実施状況報告書
  • [図書] ゲルハルト・リヒター展 公式図録2022

    • 著者名/発表者名
      ディートマー・エルガ、桝田 倫広、鈴木俊晴、浅沼敬子、福元崇志、中尾拓哉、清水穣、仲間裕子
    • 総ページ数
      352
    • 出版者
      青幻舎
    • ISBN
      9784861528910
    • 関連する報告書
      2022 実施状況報告書
  • [図書] 自然と人のダイアローグ─フリードリヒ、モネ、ゴッホからリヒターまで2022

    • 著者名/発表者名
      田中正之、ペーター・ゴルシュリューター、陣岡めぐみ、ラファエレ・ミラーニ(仲間裕子訳)、ナディーネ・エンゲル、新藤淳、久保田有寿
    • 総ページ数
      263
    • 出版者
      国立西洋美術館
    • ISBN
      9784907442385
    • 関連する報告書
      2022 実施状況報告書
  • [図書] フーゴ・フォン・チューディ─ドイツ美術のモダニズム2022

    • 著者名/発表者名
      仲間裕子
    • 総ページ数
      252
    • 出版者
      水声社
    • ISBN
      4801006337
    • 関連する報告書
      2021 実施状況報告書

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公開日: 2021-04-28   更新日: 2024-12-25  

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